5人死傷・岐阜の老健施設「ひどすぎた地元の評判」

遺族には十分な説明さえなく
週刊現代 プロフィール

虐待はどの施設でもある

介護施設での暴行事件は枚挙にいとまがない、と語るのは首都圏の老健施設に勤務する介護士(30代・女性)だ。

「介護職として初めて勤務したとき、ある先輩がこう言ったんです。『蹴るんだったら膝から下にしてね』耳を疑いましたが、彼女はこう続けました。

『顔や手はダメですよ。膝下だったらベッドにぶつけたとか階段にぶつけたとか、いくらでも言い訳できるでしょう』表情も変えずに言うもので、怖くなりました」

九州地方の老人ホームの介護士(40代・男性)も言う。

「介助させるといつも利用者を転倒させてしまうという介護スタッフがいました。基本的な介護の素養がまったくなく、まるでモノを扱うように利用者に接するのです。

襟首をつかんで持ち上げて車椅子にドシンと落としたり、ベッドにも放るように落としたりする。高齢になると、骨は思いのほかもろくなります。まして言葉を出せない人であれば、骨折しているかどうかもすぐにはわからない。

このスタッフは、骨折事件を何度も起こし、解雇されました」

 

こんな証言はぞろぞろあるのだ。

今から3年前、川崎市の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で80~90代の入所者3人が相次いで転落死した事件があった。

発覚から約1年後の'16年2月に殺人で逮捕されたのはホームに勤務する職員(当時23歳)だった。動機を「介護の仕事にストレスがたまっていた」と語っている。

この事件を丹念に取材したノンフィクション作家の中村淳彦氏は言う。

「虐待はどこにでもあります。だが、目の前で見ているわけではないから証拠はないし、施設側は完全な防止をしようがない。とりわけ認知症の入居者の対応に耐えられなくなって虐待に走るケースが多い。

そもそも高齢者が終末期を過ごし、日常に死がある環境です。人手不足により、資質に欠ける人間でも、介護職員に紛れ込んでしまっている現状と、死が日常にある閉塞した環境が虐待の背景にあるのです」

「それいゆ」は氷山の一角なのだ。一刻も早い捜査の進展が望まれる。

「週刊現代」2017年9月9日号より