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障害者と家族からカネを奪う「悪質後見人」その卑劣

成年後見制度の深い闇 第5回
長谷川 学 プロフィール

「旅行におカネは出せない」

房子さんは、後見人に選任された弁護士に「なぜ信託が必要かわからない」と何度も質問したが、弁護士は「家裁が決めたことだから」と聞く耳を持たない。

それどころか、「財産管理のため」として娘名義の通帳を母親である房子さんから取り上げ、名義を「竹田陽子 後見人○○」(○○は弁護士自身の名前)と書き換えてしまった。後見信託をしないうちから、本人も家族も資産を動かす自由を失ったのだ。以降、房子さんは弁護士に「お願い」をして、毎月、娘の生活費10万円を弁護士からもらうこととなった。

 

そして他聞に漏れず、この弁護士は、本人や家族のためを思って使われるべき財産を独善的に支配するようになる。房子さんは、こう証言する。

「私も夫も高齢なので、元気なうちに娘と思い出作りをしたいと、娘との旅行を計画したんです。ところが弁護士は『旅行なんてもったいない。お金は出せない』と、娘名義で積み立ててきた口座からお金を下ろすことを拒否してきた。結局、娘の旅費は、私のわずかな年金をやりくりしてまかなうことになりました」

こんな弁護士が、なぜ後見人につく必要があったのか。裁判所の説明では、後見信託の締結業務のためとされていたわけだが、後見信託の設定手続き自体は、信託銀行の担当者が丁寧に説明してくれれば、一般の人でもできるものだ。それが普段から信託という金融商品を扱っている信託銀行の業務なのだから、当然といえば当然だろう。

ところが家裁の元締めである最高裁家庭局は、この手続きを、弁護士や司法書士らのいわゆる「士業後見人」(専門職後見人)に独占させることを決めているのである。

なぜ、そんな方針を決定したのか。実は、日本弁護士連合会などの「士業団体」は、後見信託という制度が導入される前には、「被後見人(後見を受ける人)の財産が凍結・固定化され、本人のために使われなくなる恐れがある」と反対をしていた。ところが、のちに方針を180度転換し、後見信託推進派に転じてしまった。事業の独占が、口うるさい士業団体を黙らせる材料になったと見るのは邪推が過ぎるだろうか。