# 成年後見制度 # 福祉 # 介護

障害者と家族からカネを奪う「悪質後見人」その卑劣

成年後見制度の深い闇 第5回
長谷川 学 プロフィール

娘のために積み立ててきた預貯金なのに

それまで房子さんは、陽子さんの身上監護(医療や介護にまつわる契約や支払い)と財産管理を一人で担当してきた。だが、家裁は房子さんから財産管理の権限を取り上げ、房子さんが見も知らない弁護士に権限を与えてしまった。

このように、裁判所が後見人を複数つけて権限を分けることを「複数後見・職務分掌型」と呼ぶ。

「家裁から後見制度支援信託についてのリーフレットが郵送されてきたので、何だろうと怪訝に思っていたら、その後、突然、家裁から『弁護士を後見人につけた』と文書で通知がありました。

内容を読むと、家裁は、娘の財産を保護するためには後見制度支援信託を利用した方がいいと判断し、信託契約の締結事務を行うため、新たに弁護士を後見人につけたということでした。

私も夫も事態が飲み込めず『信託って何? 何でそんなものが必要なの?』と驚きました。娘の財産は私がしっかり管理してきて、これまで何も問題を起こしたことがありません。そもそも後見人である私も当事者である娘も『信託に入りたい』なんて一言も言っていません。

しかも家裁が勝手につけた弁護士への報酬は娘が払わされるという内容でした。到底納得できませんでした」

 

後見制度支援信託(以下、後見信託)とは、親族後見人が被後見人の財産を横領しないようにするために、一定額以上の流動資産がある場合、日常生活に使わないお金を国家(家裁)が、半ば強制的に信託銀行に預けさせ、家裁の承認抜きに使えなくする仕組みだ。

今回の場合で言えば、両親(房子さんと夫)が娘の陽子さんのお金を横領できないようにするのが目的だということになる。房子さんは、こう憤る。

「母親である私が、娘のお金をドロボーする恐れがあるから国(家裁)が強制的に銀行に信託させるということでしょう? 私と夫は、自分たちのお金を娘の将来を考えて娘名義で積み立ててきたんですよ。それを私たちがドロボーするかもしれないなんて……。こんな屈辱はありません。

これまで33年間、娘を大切に育ててきた私たちの思いを踏みにじるようなことを勝手に決めて『従え』と言われて、どうして従えますか」