北朝鮮危機の陰で激化する米中の覇権争い

「一帯一路」構想でイランにて衝突が起きる
笠原 敏彦 プロフィール

イラン核合意とは、2015年に米英独仏中露の6ヵ国とイランが、イランの核開発を制限する一方で制裁を緩和することを取り決めた合意。当時のオバマ米大統領は、中東の同盟国であるサウジアラビアやイスラエルの猛反発を押し切って合意を推進した。

トランプ氏は大統領選でイラン核合意の破棄を掲げ、今年5月には初の外遊先としたサウジアラビアでアラブ諸国の首脳を前に演説し、イランについて「イスラエルの破壊、アメリカの死、アラブ諸国とその指導者の破滅を誓っている」と強く非難、イラン包囲網の構築を呼びかけている。

米政府はイランの核合意順守状況を3ヵ月ごとに議会に報告する義務があり、前回の7月の審査では、国務省主導で「順守」の判断が下示された。

しかし、トランプ大統領はこの判断に極めて不満のようだ。新たにホワイトハウスのスタッフに調査を指示した理由だという。

トランプ大統領は米紙ウォールストリート・ジャーナルとの7月25日のインタビューでこう語っている。

「90日後にこの問題について話すことになるだろうが、イランが順守しているということになれば驚きだ」

トランプ大統領は、イランにも強硬な対決姿勢を示すのだろうか。その際、「一帯一路」の成功に威信をかける中国はどう反応するのか。

イラン問題は、イスラム教シーア派のイランがアメリカのイラク戦争失敗やシリア、イエメンの内戦に乗じて中東での影響力を強める中、スンニ派の盟主サウジアラビアとの地域覇権をめぐる争いや、イスラエルとの敵対関係の文脈で語られることが多い。

しかし、中国の「一帯一路」構想におけるイランの位置づけ、米中の覇権・勢力圏争いの視点で見ると、よりグローバルな国際秩序の行方が掛かっていることが分かるはずだ。

北朝鮮の核ミサイル問題に国際社会の耳目が集まっているが、その陰では、イランをめぐり米中の新たな駆け引きが本格化し始めているのである。