北朝鮮危機の陰で激化する米中の覇権争い

「一帯一路」構想でイランにて衝突が起きる
笠原 敏彦 プロフィール

中国とパキスタンの接近

鉄道、港湾などのインフラ整備や経済特区の設置でアジアとヨーロッパ、アフリカ東岸を結ぶという遠大な「一帯一路」構想を、中国は「世紀のプロジェクト」(習主席)と自画自賛している。

この構想は、「シルクロード経済ベルト」と「21世紀海上シルクロード」という陸上と海上の二本立てで構成。このうち陸上ルートの中核を成すのが「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)」である。

CPECは、中国西部・新疆ウィグル自治区とアラビア海に面したパキスタン南部グワダル港を結ぶ鉄道・道路網の整備を軸に、パキスタン全土でエネルギー開発や経済特区新設などを行う総合的な開発プロジェクトだ。

 

よく指摘されることだが、中国が陸路でインド洋へアクセス可能となることが持つ地政学的な意味は極めて大きい。ここでは詳しく触れないが、米中の覇権争いだけでなく、中国とインド、インドとパキスタンなど2国間の安全保障関係にも重大な影響を与えることが必至なのである。

Google Earthより

中国がグワダルを軍事拠点化することは自明であり、その場合、中国のインド洋での軍事的プレゼンスは飛躍的に増大する。

「一帯一路」が、地政学的な経済圏構想と呼ばれる所以だ。米欧日など先進諸国には同構想の実現性を疑問視し、中国の誇大妄想だと見る向きもあるが、この構想が国際安全保障の「ゲーム・チェンジャー」となりかねない可能性を秘めていることは否定できない。

インドがこの構想に強く反発し、今年5月に北京で開かれた「一帯一路」をめぐる初の国際会議をボイコットしたことは、その懸念の強さを物語るものだろう。

こうした情勢下での先のトランプ演説である。

パキスタンはアメリカの同盟国であり、多額の援助を受けてきた。しかし、トランプ氏の“恫喝”がパキスタンを一層中国寄りにすることが懸念される事態なのである。

そして、トランプ演説には、将来の「中国・パキスタン」軍事同盟強化のリスクを織り込んだような訴えがあったことにも触れておきたい。

インドにこう呼びかけているのである。

「我々は南アジア、より広くインド・太平洋地域の平和と安全保障における共通の目的を追及していくことを決意している」