実は中国共産党は結党以来「最大の試練」に直面している

日本が見落としている中国【前編】
中村 元哉 プロフィール

その理由は、江沢民時代の反日的愛国教育や胡錦涛時代から続く尖閣問題にだけ求められるものではない。むしろ、次のような共産党の歴史観にもとづく正統性確保の論理が働いているからである。

すなわち、労働者や農民のために立ち上がった共産党は、20世紀前半の戦争と革命を通じて、封建勢力や帝国主義勢力、地主、資本家らと結託してきた悪しき国民党および民国政府を打倒し、雑多な中国を自らの指導力で束ねてきた。その統合の論理が、輝かしい社会主義の理念であった。しかし、この論理は、改革開放政策が始まった1970年代から1990年代にかけて、徐々に通用しなくなった。

そこで、新たな統合の論理として持ち出されたのが、かつての戦争と革命の時代に機能していた、共産党を中心とする反帝国主義の中華ナショナリズム論であった。

この論理は、どのような立場の民衆であっても全面否定できないことから、民族や階級といったあらゆる対立を乗り越えて共産党を中心に一致団結しようとする場合には、金科玉条の論理として機能し得る。そして、その反帝の文脈において、民衆の心に最も響きやすいのが反日の記憶である。

もちろん以上のような共産党の中国近現代史観――日本近現代史観や日中関係史観ではないことに留意されたい――が、すべて真実であるわけではない。

しかし、このような現代中国の実態と反日ナショナリズムの関係性は、繰り返し確認しておかなければならないだろう。

 

日本が見落としている中国

では、これで現代中国のすべてを語り尽せているのだろうか。たとえば、中国産の食品についてはどうであろうか。

確かに中国産のすべてが安全であるとは到底いい切れない。しかし、だからといって、中国産のすべてが危険であり、その裏返しとして日本産がすべて安全である、という確たる根拠があるわけでもない。

事実、日系企業が出資している中国産のほうが、市場である日本の世論を強く意識して作られ、輸入時にサンプリング検査を経なければならないことから、作り手の良心を信頼するほかない地産地消の日本産よりも、確率的にはより安全である、との見方もある。

こうした事例を一つとってみても、「日本が見落としている中国」はやはり存在するのではないだろうか。もしそうだとすれば、私たちはそれを絶えず理性にもとづいて思考しなければならない。

そういう主体的意識をもって、現代中国と現在に至るまでの中国近現代史を眺め直してみると、幾つかの見落としてきた事実があることに気づく。

では、それらは何か。

そのなかの一つにあって、現代中国を読み解く上で優先順位の高い事実こそが、中国の憲法と憲政の歴史である。以下、習近平総書記の中国の夢を突破口にして、その理由を説明していくことにしよう。

(続きはこちら gendai.ismedia.jp/articles/-/52725