「名古屋のカネ持ち」は、結局どれくらい金持ちなのか

好景気の街で広がり続ける「格差」
週刊現代 プロフィール

ブームとなった名古屋めしの代表格とも言えるみそかつ。創業70周年を迎えた老舗みそかつ店「矢場とん」の三代目、鈴木拓将社長(44歳)も実に名古屋らしい手堅い経営を心がけ、人材育成に力を注ぐ。

「名古屋の資産家はベンツを持っていても、プリウスに乗って出かけていくような、たとえおカネを持っていてもそうは見せません。

私も名古屋人気質で、堅実な合理主義者。中学時代から厨房に入って家業を手伝っていましたが、母からは『日銭商売は怖い』といつも言われてきました。

大学卒業後、ヒルトン名古屋で2年間働いたあと、'98年に矢場とんに入社。当時、1億8000万円だった売り上げは、東京進出などを経て'05年には17億円に、'14年には私が社長を引き継ぎ、'16年には40億円余りとなりました。

名古屋名物は長い間、きしめんとういろうでしたが、その後、グルメ番組が増え、地方の珍しいものが全国に紹介され始めました。ひつまぶしと味噌煮込みうどんが注目され、その次に着目されたのが、みそかつだったのです」

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悩んでるヒマはないがや

現在、国内外に23店舗を構えるが、鈴木社長は闇雲に事業を拡大するつもりはないと言う。

「何年後に年商いくら達成というような、経営者としての夢はありません。それよりも創業100周年を迎えた時、どれだけ多くのスタッフが自分についてきてくれているかが重要です。

たしかに外食産業は非正規雇用も多く、給料も低く抑えられがちです。労働時間が長いとブラック企業だと言われる風潮もありますが、働いたことに対価を支払わない会社がブラック企業なのではないでしょうか。私は、その人が懸命に働いたら、きちんと飯が食えるようにしたいですね」

平行して鈴木社長は国際貢献にも力を入れる。創業60周年の際にカンボジアに小学校を建設するプロジェクトを始動させたのだ。

「今年で5校目ができました。社員もカンボジアの学校に連れて行きます。カンボジアは貧しい国ですが、自殺者がほとんどいません。そんな国で必死に生きる彼らを見ることで、社員自身が持つ悩みが小さく見えたり、物の見方が変わったりします。

目を輝かせて明るく必死に生きるカンボジアの子供たちの姿を見ると、日本に自殺者が2万人もいることにも疑問を感じます。

日本の子供は世界一平和な環境で育っているのに、6人に一人が貧困状態で、職があるのに、働かない人もいる。これっておかしいじゃないですか。そういう点を、まずは自分の会社の従業員から正していくのは大事だろうと思います」

 

他人の目を気にするからこそ、堅実経営をモットーにする。派手好きの背後には、地に足の着いた幸せがある。名古屋のカネ持ちに共通する特徴だ。

好況に沸く名古屋の街には、他人のためにおカネを使うことに幸せを見出している資産家たちがいた。これが名古屋経済の底力なのである。

「週刊現代」2017年9月2日号より