アパレル業界は、どうやら「死にかかっている」かもしれない

コストカット続きで現場は悲鳴
週刊現代 プロフィール

クールビズでスーツが売れない

若い世代ではさらに「服離れ」が顕著だ。'05年までワールドの総合企画部長を務めたコンサルタントの北村禎宏氏はこう分析する。

「インスタグラム(写真共有サイト)に自分の生活を投稿するなど、SNSでアイデンティティを表現でき、もはや服でアピールする必要がなくなりつつあるのかもしれません。服を買うとは、情報を消費すること。同じ情報を扱うインターネットで、精神が満たされている側面があると思う」

銀座の中央通りに、オンワードHDが展開するブランド「23区」の路面店、そして三陽商会のブランドが入ったSANYO GINZA TOWERがある。

8月中旬の日曜の午後、二つの店舗で買い物をしているのは、中国や東南アジアからの数人のインバウンド客だけ。店を訪れた日本人客はわずかだった。

女性だけではない。男性にとっても、服は「生活用品」になっている。証券アナリストの佐々木加奈氏も言う。

「男性アパレルでとくに落ち込みが激しいのはスーツ系の製品です。これは低価格のブランドの影響というより、需要そのものの減少と言えます。

この10年で、契約社員やフリーランスなど服装に縛られることなく働く人が増えたうえ、企業も『クールビズ』や『カジュアルフライデー』を推進し、スーツを着ないよう指導しているためです」

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5~9月、つまり1年の3分の1以上はネクタイも上着もいらない。前出の三浦氏によれば、単身男性の家計では、実際それらへの支出が減少傾向にある。

「単身の男性の家計で代わりに増えているのは、インテリアや健康食品、傷害保険など。インテリアはおそらく、快眠枕や腰痛に効く布団などでしょう。

バブル期のように、ブランド品を恋人にプレゼントして……という華美な消費は縮小し、『予防的』な消費が中心になってきているように思います。服や靴もスポーツ用の機能的なものが人気です」(前出・三浦氏)

 

服にカネをかけるくらいなら、ゆっくり体を休め、将来に備えるために出費したい。もし服を買うなら、動きやすく、機能性が高いものがいちばんだ――。

しかし、消費者のこうした変化に、企業側はついていけなかった。それどころか、消費者の「服離れ」に拍車をかけた側面もある。中途半端な価格と品質の製品を大量に供給し、消費者から購買意欲を奪っていった。

前出『誰がアパレルを殺すのか』の著者の一人、杉原淳一氏はこう話す。

「'90年代にバブルが崩壊し、ものが売れなくなりファストファッションが台頭する中、アパレル各社は目先の売り上げを立てようと、生産拠点を中国に移し、大量生産でコストカットを図ってきました。

国内のマーケットは縮小しているにもかかわらず、製品の品質には目をつぶり、過剰に製品を供給することで生き延びようとしたのです。しかし、それがいま自らの首を絞めている」