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羽生善治「棋士になって30年、まさかこんなことになるとは…」

人工知能の現在と未来

「ひらめき」のメカニズムは解明されるか

羽生 将棋のソフトが強くなっていくと、人間の思考がどういうものであるかが鏡に映すように浮かび上がってきます。コンピュータと比較することで、「人間はこういうところが優れているんだ」「ここが盲点なんだ」ということがわかってくるんです。

AIは、ニューラル・ネットワークに代表されるように人間の脳の仕組みをモデルにして進んでいる面がありますが、このまま技術が進んでいったら、ひらめきのような人間の言語化しづらい能力も解明される日がくるのでしょうか? それとも、やっぱりどこかミステリアスな部分が残り続けるのか。

篠原 いまのAIは本当の意味で物事を理解したり、解釈したりして何か答えを出しているわけではありません。私がAIの限界だと思うのは、人間であればわからないことは「わからない」「知らない」と言えますが、AIは何か答えを出してしまうんです。

羽生 間違ったデータを元に、正しく考えて、間違った答えを導く可能性もありますよね。

篠原 はい。だから、意味を理解するという観点では、まだまだAIは遠いと思っています。

羽生 私はよく思うのですが、人間の時間とAIの時間は、時間の観念がまったく違いますよね。人間はなんだかんだ言って1日の3分の1は眠っていますが、AIは休みなく学習し続けられる。しかも超高速で…。そうすると、枠組みさえうまく与えられれば、不可能と思われていたこともあっという間にできるようになるかもしれません。

ただ一方で、将棋を例に人間の思考の特徴を考えてみると、人間の場合、将棋が強くなっていくというのは、手をたくさん読まなくなるということなんですよね。百通りの手があっても、瞬間的にその中から二つ三つに絞れるようになる。無駄なステップを端折るということが強くなることとつながっています。

篠原 そうですね。脳の中には、論理的に考える部分もあれば、飛躍的に考える部分もあると思うんですけど、やっぱり人間がこうやって活動しているときというのは、すべて論理的に組み上げているわけではなくて、相当飛躍的な判断があると思うんです。そのあたりの人間の優位性はしぶといような気がします。

さて、そろそろ我々の研究をご覧いただきましょうか。

羽生善治後編につづく!

〔構成:松本博文〕

(後編はこちら http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52693