エリート家系でただ1人「学習障害」を抱え否定され続けた女の悲劇

育てられない母親たち⑤
石井 光太 プロフィール

暴力団員の同居人は生活保護受給不可

風俗店で働きはじめたが、またすぐに彼女は「食いモノ」にされる。客の暴力団員と知り合い、貢がされるのである。暴力団員は覚せい剤の売人だったが、自分も極度の依存症になっていてお金がなかった。それで彼女が風俗店で働き、それを生活費にしていたのである。

同棲を初めて1年後、彼女は男の子を妊娠した。どうしようかと思って男に相談したところ、予期せぬ言葉が返ってきた。

「俺の子なら産んでいいよ。ちょうど子供が欲しかったから」

沙耶も温かな家庭に憧れていたので、「うん」と答えた。だが、これは後先のことを何も考えない出産だった。

 

産後、沙耶は男に赤ちゃんを預けて風俗の仕事で生活費を稼ぐつもりだった。だが、男は薬物におぼれてまったく育児をしてくれない。赤ん坊が死にかけたことも何度かあった。

沙耶と男は相談して、生活保護を受けようと考えた。だが、役所に申請しに行った際、こう言われた。

「暴力団員と一緒に暮らしている人には、生活保護の受給は認められません。受給を望むのなら男と別れてください。それであれば、一旦母子生活支援施設に母子で入ってもらって生活保護を受けることはできます」

沙耶は暴力団員の男と相談し、形だけでも別々に暮らすことにした。そして、沙耶は赤ちゃんをつれてアパートを出て、母子生活支援施設に入居したのである。

だが、彼女は男との関係を絶ったわけではなかった。施設に黙って風俗店で働き、その金を男に貢いでいたのである。施設側はすぐにそれを察知し、児童相談所も含めて話し合いを行った。施設の側が出した選択は次の2つだった。

・男性と完全に縁を切る。
・子供を乳児院に入れて男性と暮らす。

沙耶が選んだのは、後者だった。つまり、赤ちゃんを施設に預け、母子生活支援施設を出て男性と暮らすことだったのである。

この選択をした理由を、沙耶は次のように語る。

「乳児院に赤ちゃんを入れても、私は親なので面会に行くことはできます。なので、彼氏と住みながら風俗の仕事をし、休みの日は会いに行くってことができる。それであれば、別にいいかなって思って……」

photo by iStock

沙耶は心から赤ちゃんを愛し、そして男性を愛している。この2人がいなくなれば、自分は生きていけないと思うとまで語っている。だからこそ、男性といながら毎週赤ちゃんと過ごせる道を見出したのだ。

今、彼女は風俗の仕事をしながら、週に1回どころか、2日に1回くらいのペースで赤ちゃんに会いに行っているという。