エリート家系でただ1人「学習障害」を抱え否定され続けた女の悲劇

育てられない母親たち⑤
石井 光太 プロフィール

沙耶はこうしたことから試験に恐怖心を抱くようになり、テスト期間が近づくと原因不明の発疹を出して、痙攣を起こすようになった。病院で診てもらうと、医師からこう告げられた。

「勉強勉強と言われ続け、試験の成績を気にするあまり、ストレスで精神に異常をきたしています」

母親は医師に沙耶の成績のことを相談した。医師によって検査が行われ、次のようなことを言い渡された。

「沙耶さんは学習障害です。それに障害とまではいきませんが、IQも低いようです。無理に勉強させるより、彼女にあった道を進ませるのがよろしいのではないでしょうか」

 

両親は医師の言葉をはっきりと聞いていたはずだ。だが、2人はそれを受け入れることはなかった。家に帰るなり、「学習障害のわけがない。お姉ちゃんたちだってできるんだ。おまえがちゃんと勉強していないだけだ」と言い出し、これまで以上に勉強を強いるようになった。

沙耶は小学校6年生の頃から、ストレスのあまりリストカットをするようになった。だが、彼女がカッターで切ったのは手首ではなく、太ももやわき腹だった。一度だけ手首を切った時、母親に「そんなに死にたいなら、今すぐ首を切って死んで見せろ! 馬鹿でもそれくらいできるだろ!」と罵られた。それ以来、両親に見つかるのが恐ろしく、見つからない箇所を切っていたのである。

援交させられ金を巻き上げられる

中学を卒業した後、沙耶は成績不良のため付属の高校へ進学できず、県立高校へ進学した。学校へ通ってさえいれば、誰でも入学できるような偏差値の低い高校だった。これが彼女を狂わせた。

これまでどれだけ家庭に不満を持っていても、お嬢様学校だったために非行に走ることがなかった。非行を教えてくれたり、一緒にしたりする同級生がいなかったのである。だが、県立高校には選りすぐりの不良たちが群れをなしていた。

彼女が夜の街に魅了されるまで1ヵ月もかからなかった。友人たちとともに繁華街をたむろするようになったのである。そして先輩たちが行っていた援助交際グループに加わり、先輩が取ってきた客とホテルへ行って小遣いを稼ぎだした。先輩が3割取って、自分が7割。だが、金が貯まることはなかった。彼女は言う。

「お金はもらっていたんですが、私、なんかよくお金の勘定ってわかんないんです。それで先輩とかに、『これ買って』とか『ここの飲み代払っておいて』って言われてお金出してたんで、1日に4、5人お客さんとってもいつもお金がありませんでした」

私が見る限り、彼女は物事を深く考えようとしないタイプだ。IQの低さも関係しているのかもしれない。

物事を深く考えることなく、その場の空気に流されるだけ。質問をしても「そーかもしれません」「ですかねー」と曖昧な答えばかりして、ヘラヘラと笑みを浮かべてばかり。悪い表現をすれば、簡単にだまされるタイプである。

きっと先輩たちもそれを見透かして援助交際をさせ、お金を巻き上げていたのだろう。やがて彼女はいくら客をとってもほとんど分け前をもらえなくなった。

何度か補導されたことが原因で、18歳の時、沙耶は親から学校を止めさせられ、家から追い出される。頼る先は、寮のある風俗店だけだった。援助交際を続けたことで、性に関する道徳観や倫理観が壊れてしまっていたのだろう。