ある知的障害をもつ女性が抱える、恋と育児にまつわる様々な問題

育てられない母親たち④
石井 光太 プロフィール

生活費は障害者年金と福祉制度に依存 

現在、美由紀は母子生活支援施設を出て、職員が用意してくれたアパートで夫と娘と3人で暮らしている。夫婦ともに働いていないため生活費はすべて障害者年金など福祉制度に依存。施設の職員や市の職員が交代でアパートを訪れて見守りを行っている。

私が美由紀に会いに行った時、2DKのアパートはゴミ屋敷となっていた。2、3日に一度誰かが確認しに来てもこの状態なのだという。同行してくれた施設の職員は次のように述べた。

 

「娘さんは小学生になりましたが、両親が病気なので発達は同年代の子と比べて遅れています。学校も休みがち。美由紀さんは、今も娘さんにご飯をあげなかったり、ほったらかしにしたりするので、私たちの方で気をつけなければならないのです」

娘は私のような部外者が怖いのか、部屋の隅で隠れて目を合わせようとしない。心配だったのが、指の爪の周りの皮膚が10本すべて剥けていたことだ。癖でそうしてしまうのだという。「皮膚むしり症」と呼ばれる精神疾患の1つだ。

職員は言った。

「このままだと娘さんの将来が心配なので、どこかの段階で施設に預けることを検討しなければならなくなるかもしれません。でも、美由紀さんも旦那さんも、心から娘さんのことを愛していますし、2番目の子を乳児院に出したので、この子だけは手元に置いておきたいと言っています。私たちも強制的に引き離す権利は持っていませんので、どうするか悩ましいところなのです」

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言うまでもないが、知的障害があっても結婚する権利や、赤ん坊を生んで育てる権利はある。ただ、育児となると、一般の人よりははるかにハンディーが大きく、美由紀の場合のように支えてくれる両親がいなくなった場合は、問題が生じかねない。その時、真っ先に犠牲になるのは子供なのだ。

母親に軽度の知的障害があった場合、どこまで育児を任せるべきなのか。どこをラインにして介入するべきなのか。

人によって障害の程度も、環境もまったくバラバラなので一様に決めるのが非常に難しい。だが、子供を犠牲にしないよう、健常者とはまた違ったサポート体制を構築して行く必要がある。

* 石井光太さん記事バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/kotaishi

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