海外でヒアリ並みに恐れられている「ジャパニーズ・ビートル」の猛威

外来生物との熾烈な戦いの歴史
青山 潤三 プロフィール

「モンシロチョウ」も、もとは外来種

もちろん日本にも、ヒアリだけでなく、これまでにもたくさんの外来種がやってきています。前述したブラックバスやブルーギルはあまりに有名ですが、未だに脅威とされているものの代表格は、南米原産のジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)ではないでしょうか。日本全国の水田でイネの葉を食い荒らし、ピンク色の卵を産み付けて農家を悩ませるあの巻貝です。

 

ジャンボタニシは南米原産ですが、1980年代に食用として台湾経由で輸入されました。今でも台湾や中国南部、東南アジアでは普通に食卓へ供され、「ごちそう」とされている地域もあるほどです。

ジャンボタニシ(Photo by KENPEI, CC BY-SA3.0)

ジャンボタニシの卵には毒が含まれていて、それが繁殖を助けている面もあると思われますが、面白いことに、この毒が唯一効かない天敵が、同じ南米原産のヒアリなのです。もしかすると、ヒアリが日本全国に定着すれば、ジャンボタニシの繁殖も下火になるかもしれません。

その他には昆虫でも、近年ではアカボシゴマダラムシャクロツバメシジミ(ともに中国大陸原産)などの蝶が増え、駆除に躍起になっている地域があります。ムシャクロツバメシジミは小さく可愛らしい蝶ですが、日本にはきわめて近縁のクロツバメシジミという在来種の蝶がいて、両者はおそらく容易に交雑ができるため、放っておけば将来、純粋なクロツバメシジミは消滅してしまいかねません。

中国・広東省のムシャクロツバメシジミ(筆者撮影)

一方で、このような外来種の中には、多くの日本人が日本在来種だと思い込んでいる生物もいます。例えば、今やすっかり日本の春の風物詩となっているモンシロチョウは奈良時代に、セイヨウタンポポは大正時代に日本へ侵入した外来種です。セイヨウタンポポは当初、葉や根を食用にするために輸入されたといいます。

また現在、日本への定着の過渡期に入っていると思われる外来種もあります。北米原産のセイタカアワダチソウは、ご存じの通り日本では雑草として爆発的に増え、一時は花粉症の原因のひとつとして悪者扱いされましたが、ここしばらくは繁殖が下火になってきているようです。種としてのバランスが安定し、日本の生態系に溶け込みつつあるのかもしれません。

こうして外来種の歴史や経緯を俯瞰してみると、日本にはこれまでにも実にさまざまな生物が侵入していますし、また反対に、日本原産の生物が海外へ進出もしています。新たに侵入しつつある生物に対しては大々的に騒ぎ、すでに溶け込んでしまったものに関しては無関心というのも、少し考えてみるとおかしな話に思えてきます。

ひとつだけ言えるのは、ひとたび繁栄あるいは衰退を始めた生物の行く末を、人間の力でコントロールすることはできないということです。

繁栄も衰退も、常にその要因は単純ではありませんし、ピンポイントでの制御や駆除は事実上、不可能です。生態系や環境のバランスをトータルに捉えねば対処はできないでしょう。そしてそれは、思いのほか難しいことなのです。

青山潤三(あおやま・じゅんぞう)/1948年生まれ。写真家・生物研究家。中国四川省・雲南省の奥地や琉球諸島をフィールドに、植物や昆虫などの撮影・調査を長年にわたり行っている。著書に『世界遺産の森 屋久島』(平凡社新書)、『カラー版屋久島 樹と水と岩の島を歩く』(岩波ジュニア新書)『決定版 山の花1200』(平凡社)など。