海外でヒアリ並みに恐れられている「ジャパニーズ・ビートル」の猛威

外来生物との熾烈な戦いの歴史
青山 潤三 プロフィール

本来は穏やかな生き物が、なぜ?

植物でも、同じようなケースがあります。最も代表的なのが、初夏に白い花を咲かせるツル植物のスイカズラです。スイカズラは中国の一部にも分布していますが、もとは日本在来種で、20世紀中頃に北米に侵入したとされています。

スイカズラは漢字で書くと「吸葛」、つまり花の蜜を吸うことができる葛(ツル草)という意味です。英語にも、昔から「ハニー・サックル」という言葉があり、「蜜を吸うことのできる植物」を指す一般名詞として用いられていたようです。しかし現在では「ハニー・サックル」と言えばスイカズラのことだけを指すようになっています。それほどスイカズラは欧米でも定着しているのです。

当初は園芸用として欧米に持ち込まれたスイカズラですが、特にアメリカでは野生化したものが異常繁殖することがあり、問題になっています。さらに近年では、スイカズラに加えて、これも日本から持ち込まれたツル植物のクズ(ちなみにこちらも漢字で書くと「葛」ですが、スイカズラ科ではなくマメ科の植物です)も急速に繁殖を遂げ、その駆除に大わらわという地域があるそうです。

スイカズラ(Photo by gettyimages)

興味深いのは、マメコガネにしても、またスイカズラやクズにしても、故郷の日本ではさして猛威を振るっているわけではないことです。彼らは他の多くの在来野生種と同様に、日本ではつつましく野辺に暮らし、咲いているだけです。

なぜ日本では穏やかに生きている生物が、海外に進出した途端に爆発的に繁殖したり、猛威を振るい始めるのでしょうか?

 

いささか教科書的になりますが、以下のような解説が定説とされています。

ある生物が、それまでその生物が分布していなかった地域に新たに侵入したとします。その際、侵入先にその生物と同じような生態系上の地位を占める在来生物が棲んでいない(これを「ニッチ(生態的地位)のギャップ(隙間)がある」と言います)なら、侵入した生物はそのニッチを独占できるので、爆発的に増加します。

このようなケースでは、競合種(例えば、蝶なら同じ植物を食草とする種)や、天敵もいないことが少なくありませんから、繁殖を邪魔する要因もありません。

ただし、新天地での繁殖が飽和状態に達すると、何らかのネガティブな外圧が加わった時に、生態系の中でのバランスを保つことが出来ず、往々にして一気に勢力が衰えることもあります。こうした試練を乗り越えた生物が、真の意味でその場所の「定着種」になるというわけです。

もっとも僕自身は、上記の説に完全には同意していません。ではどう考えているのかというと、非常に複雑な話になってしまうので、また稿を改めてご説明できればと思います。ほんの少しだけお話しすれば、ほとんど同じような生活史や生態系中の位置づけをもつ在来種が衰退に向かっているにも関わらず、外来種の方は繁栄を遂げている、という例もあるのです。こうしたケースは、ニッチの仮説では説明できません。