「死体格差」死に方から見えてくる現代社会の問題点

私たちもいつ巻き込まれるかわからない
西尾 元 プロフィール

「孤独死」一人歩きする負のイメージ

厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、2001年からの10年で、65歳以上の一人暮らしの世帯数は200万近く増加して、500万世帯を越えた。

東京都監察医務院によれば、東京都23区内で、自宅で死亡した65歳以上の一人暮らしの人数は、2002年に1,364人だったのが、2012年には2,729人とほぼ2倍になったという。

人口の高齢化、核家族化による独居世帯数の増加、生涯未婚率の上昇などによるもので、今後もこの傾向は続くと予想されている。

最近、「孤独死」という言葉をよく耳にするようになった。実は、私はこの「孤独死」という言い方が好きではない。「孤独」というと負のイメージがつきまとうように思う。

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一人で生活していれば、病気など何かのときに、誰かに気づかれずにそのまま亡くなってしまう危険性は、確かに高くなってしまう。発見されたときに、亡くなってから時間が経ってしまって、体が腐敗してしまうこともあるだろう。

しかし、一人暮らしの方が、人に気兼ねせずに生活できて良いという人もいる。一人暮らしで、お酒を飲んだせいで肝臓が悪くなり、自宅で亡くなった人を時々解剖する。

そのとき、「なんとかならなかったのか」と思う反面、「好きなお酒を飲んで亡くなったのだろうから、死に方としてはそれほど悪くもなかったのではないか」と思うこともある。このあたりの感覚は、日頃、異状な死をあたりまえのように目にしている法医解剖医ならではの独特な死に対する感じ方なのかもしれない。

一人で暮らすことは何も悪いことではない。一人でひっそり亡くなりたいと思う人もいる。しかし、それを望んでいない人が、「孤独死」を迎えることがないような優しい世の中になって欲しいと強く願う。