「95%が効果を実感」健康食品のあの数値に潜む落とし穴

市場が拡大する今だからこそ言っておく
原田 隆之 プロフィール

科学的リテラシーという武器

なんだか健康食品やサプリを目の敵にして、文句ばかりつけてきたような感じであるが、ここで私が強調したいのは、科学的リテラシーという武器を身に付けた消費者になることが、今後ますます重要になるのではないかということである。

次から次へと新しい健康食品やサプリが現れては消え、それらの宣伝に踊らされて、結局はひとつも健康にはなっていない。

こんなことがないようにするには、イメージや一時の感情に流されずに、これまでくどくどと述べてきたような「健全な懐疑心」というフィルターを使って、情報の信頼度をふるいにかけることが必要になる。

実際、薬の治験では、意地の悪い私の疑問をすべて消し去ることができるように、「二重盲検ランダム化比較試験」という厳密な手続きで効果の検証を行い、確実な効果があるものだけが市場に出るようになっている。

数人の都合のよい声、単なる思い込みやプラセボ効果、共介入などの雑音をすべて消し去って、真の効果があるものが患者に提供されるようになっている。

二重盲検ランダム化比較試験とはどのような方法か簡単に説明すると、千とか万単位の患者を集めてきて、ランダムに2群に分け、一方に効果を検討したい薬、他方にプラセボを投与して、その経過を見る。もちろん、本人は自分が飲んでいるのは真の薬か偽薬かわからない。

さらに、効果を判定する医師にも、どの患者が真の薬を投与されていて、どの患者が偽薬かを伏せておく。そうしないと判断が歪むからだ。患者も医師も目隠しされているという意味で「二重盲検」という。これが今のところ、効果を確かめるために一番厳密な方法である。

 

野放し状態の健康食品

健康食品やサプリには、そうした厳密な方法が義務づけられていないため、いわば野放しで、真の効果は二の次と言っても言い過ぎではない状態である。

そして、企業はそれぞれ知恵を絞って、それらしい「効果」を宣伝し、人々をそれに乗せようとしている。

その一方で、画面の片隅に小さな文字で、「個人の感想です」「効果を保証するものではありません」などと書いてある。

これらは「打消し表示」と呼ばれるもので、効果を華々しく歌い上げる「強調表示」のいわば罪滅ぼしか言い訳かのようにも見える。しかも、わざと見えにくくして、見落としてもらえるようにしていると言われても仕方ないような表示の仕方である。

消費者庁の調査では、新聞雑誌広告の場合、打消し表示の6割近くが8ポイント以下の小さな文字であったという。そして、それを見落としていた消費者は9割に上ったという。幸い、消費者庁はつい先日、こうした広告にこれまでより厳しい姿勢で臨むことを打ち出した。

このことは消費者保護という観点で大きな一歩であることは間違いない。しかし、先に述べた多くの疑念を完全に払拭してくれるものではなく、やはり消費者側が科学的リテラシーを身に付けることしか、目下のところ解決策はないように思われる。

実際のところ、健康食品やサプリメントで、二重盲検ランダム化比較試験を実施しているものは皆無と言ってよいだろう。これは「特定保健用食品(トクホ)」とて同じである。この方法で効果を検証していないのであれば、効果を信じてはいけない。

これを言っては元も子もないが、きちんとした効果があるなら、トクホやサプリではなく薬になっている。