結局のところ、「シリア内戦」は今どうなっているのか? 

「IS制圧で一安心」ではまったくない
末近 浩太 プロフィール

ロシア主導の新たな停戦枠組み

では、ロシアは、シリア紛争をどのように終わらせようとしているのだろうか。

シリアが紛争前の姿に戻る可能性は、限りなくゼロに近い。その理由は、何よりもアサド政権にその力が残されていないためであるが、それを支援するロシアの側から見たときには、次の2つを指摘できる。

1つは、アサド政権にシリア全土を平定させるには多大な軍事的コストがかかるため、もう1つは、これまで紛争に関与してきた諸外国との必要以上の関係悪化を回避しなければならないため、である。

したがって、ロシアは、シリア国内の各地で活動する反体制諸派とそれに関わりの深い周辺諸国に個別に働きかけながら、部分的に停戦を実現していく方法を採用した。

 

まず、ロシアは、2017年1月、カザフスタンの首都アスタナで、シリア紛争解決のための新たな国際的な会合を開催した。

そして、同年5月4日、アサド政権と反体制諸派のそれぞれを支援することで対立してきたイランとトルコが、シリア国内の4箇所に「緊張緩和地帯」を設けることで合意した。

具体的には、①シリア北部のイドリブ県やラタキア県を含むシリア北東部、アレッポ県西部、ハマー県北部、②ヒムス県北部のラスタン市、タルビーサ市一帯、③ダマスカス郊外県の東グータ地方、④ダルアー県、クナイトラ県内の地域の4つであった。

このようなロシアと周辺諸国との個別の取引による部分的停戦の枠組みは、裏を返せば、それまで紛争解決のための唯一の方法と考えられてきた「ジュネーヴ・プロセス」の行き詰まりを示唆するものでもあった。

「ジュネーヴ・プロセス」は、2012年6月に合意された、シリア紛争の解決に向けた国際的な枠組みである。そこでは、紛争が特定の勢力の軍事的な勝利ではなく、すべてのシリア人による「国民的対話プロセス」を通して政治的に解決されるべきである、と謳われた。

しかし、すべてのシリア人を含むべきとする包括性は諸刃の剣であった。

アサド大統領本人が「ジュネーヴ・プロセス」に参加するべきなのか。停戦ないしは和平が合意されたとしても、その後の同大統領の処遇はどうするのか。そもそも、誰が「反体制派」を代表するのか――。

こうした数々の本質的な問いが浮上するたびに、ステークホルダー間の対立は激化し、その結果として、話し合いの入り口で引き返すような状況が繰り返されてきた。