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「コイツには何言ってもいい系女子」戦略がハラスメントを加速させる

「自虐」が「自滅」を生んでしまう

敢えて自分を一段も二段も下げる

コイツには何言ってもいい系女子」。下ネタOK、いじりOK……に、見える女性たち。このシリーズでは、日本企業で働く女性たちの受けているハラスメントを追ってきたが、この話がややこしいのは、それを彼女たちの態度が助長してしまっている側面があるためだ。

コイツには何言ってもいい系女子」を演じるのは、仕事を円滑に進めるための生存戦略――。大手メーカー総合職のナナさん(仮名、30代)は、自分自身と上司や男性の先輩たちの社内でのやりとりを「ロールプレイ」と呼ぶ。

 

「ぷんぷんって怒るところまでロールプレイですよ。ある程度の年齢のおじさんって生意気な感じの女子が好きじゃないですか。頭良くて適度に小生意気で可愛げのある、というか。たとえば私性格がガサツなので、お前女子力ナイいじりというか、『そんな雑で結婚できんのか』『彼氏いるのか』とか言われます」

「めちゃくちゃお酒飲むので、そういうこととか、『家のことできるのか』とか。でも、そういうときに『そういうこと言わないでくださいよー』みたいな反応してあげないと盛り上がらないみたいなところがあって。本当これ、なんていうロールプレイなのかなぁって思いながらやってます」

ナナさんのケースは、ある程度自覚的に「おじさんたちが好きな女子」に自分を合わせてきた。自虐が状況に加担している側面もある。

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「自分でも、飲みすぎて(電車を乗り過ごして)終点まで行っちゃったとか、自分の大学時代のモテないぶりを露呈したとか、あえて自分を一段も二段も下げて話していたところはありますね。日中も、合コンさしすせそじゃないですけど、さすがですね、すごいですね、そうなんですね知らなかったです勉強不足でしたーみたいな」

男性に好かれるために無知なフリをする女子がいるという現象は、今にはじまったことではない(酒井順子『男尊女子』など)。しかし、ここは職場で、彼女たちは本来、男性と同じように仕事で成果を上げることを期待されている総合職。そこで彼女たちは男性にモテようとして知識がないふりをしているのだろうか? そうではない。

「ベテランの人が多い職場に配属されたのですが、社内で他の人に仕事をお願いしてやってもらわないといけないんですね。でもこんな小娘からものを頼まれたくない。入社した時に『お前の仕事は、オヤジに仕事をさせることだからそのために女性性を使え』と言われて。普段から下手に出ますね。あなたのこと脅かさないから協力はしてと」

「私はあなたの敵じゃないよ、あなたと戦うような相手じゃないよ、みたいな。自分より上の女性がいるときにはより一層拍車をかけますね、あなたと競い合うような者ではありませんと示すために」。

 

前々回記事で、マジョリティがマイノリティを排除する論理について触れたが、排除されないための戦略が「下手に出る」だ。ナナさんは同じ女性に対してもこの戦略を使っており、また男性同士でもこうした“ロールプレイ”は大なり小なりあるだろう。これで円滑に仕事がまわるのであれば良さそうな気もするが、ナナさんは「消しゴムのように自分が減っていく感覚がある」と言う。

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「私は受け流せる性格で、こういう感情労働をして、仕事上のリターンがあれば『まぁいいか、我慢代だ』と思っていますが、それでも生存戦略まちがえたかなと思うことはありますね。でもどうしたらよかったのか。それ以外の生き延び方もわからない」と話す。

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