日本のドラマがこの10年で急速につまらなくなった、本当の理由

こうして「良質な作品」は消えた
田崎 健太 プロフィール

いつの時代も犯罪はつきない。そして時代によって、社会の歪みは変わり、犯罪の質も手口も、動機も変わるものだ。本来ならば、テレビドラマはそこに目を向けるべきではないのか――。

こう問うと、脚本家の坂田義和は首を振った。坂田もまた日本シナリオ作家協会の会員である。

「例えば、今年1月にオンエアーされた『愛を乞うひと』は、出来不出来は別にして、幼児虐待を扱った社会派のドラマだった。当然、内容は暗くなり、視聴率も期待できない。こうしたドラマは、文部科学省などの『お墨付き』がない限り作りづらいというのが現状です」

『愛を乞うひと』は篠原涼子主演、読売テレビ制作で、文部科学省選定スペシャルドラマとして2017年1月に放映された。連続ドラマではなく、単発の作品である。

 

だから、原作の「毒」を抜く

また、原作を換骨奪胎するドラマも増えている。それが成功していればよいのだが、中には原作と「別物」になってしまうことも少なくない。

例えば松本清張。彼の名前は視聴率が取れるとテレビ局が判断しているのか、今なお彼の原作を使ったドラマは作られている。中でも『砂の器』は映画化、テレビドラマ化が何度も行われてきた。

『砂の器』の原作では、犯人は自身の父親がハンセン病であることを隠すために殺人を犯すのだが、1974年製作の映画化の際には、こうした設定が「ハンセン病に対する差別を助長する」として患者団体から抗議を受けた過去がある。2004年に中居正広(SMAP)の主演でリメイクされたときは、この「父親がハンセン病」という設定そのものが消え、作品から毒が抜かれることになった。

同じ松本清張の原作でも、時代設定が現代に置き換えられることもある。これはストーリーの都合というよりは、経費削減によるものだと前出の西岡は指摘する。

「2007年にリメイクされた『点と線』のように昭和30年代の街並みを再現したものもありましたが、普通はそこまでできない。お金を掛けられないから、現代劇にする。そうなると松本清張さんが描こうとした物語でなくなってしまうんですよ」

そして西岡はこうも続ける。

「もちろん、例えば恋愛物であったとしても、大人の鑑賞に堪えうるドラマを作ることは可能です。ただ、全体的に今の作り方はやはり視聴率本位で、中身がどうなっているかを気にしない傾向がある。レベルがどんどん下がっているから、視聴者が韓流ドラマや海外ドラマに流れるのも分かります」

(文中敬称略、後編「大手芸能事務所に支配された『テレビドラマ20年史』」に続く)