東京大学で起こった、非常勤職員の「雇い止め争議」その内幕

最大10万人に影響が及ぶ可能性も
田中 圭太郎 プロフィール

全面対立の可能性

組合側を驚かせたのは、それだけではなかったという。団交の場で、大学側は2018年4月から「職域限定雇用職員」という、フルタイムで定年まで働ける、新たな非正規教職員制度を作ると説明した。契約期間が満了しても引き続き働きたい人は、フルタイムの人もパートの人も、毎年秋に実施される試験を受け、それに合格すれば、非常勤ながら定年まで働くことが可能になる制度だという。

しかし、この「職域限定雇用職員」とは、専門的かつ高度な仕事をする教職員であり、予算の裏付けがある部署に限っての募集となる。現時点では対象の部署は明らかにされず、予算の裏付けがないとされた職場で働く人は、そもそも対象外となる可能性が高そうだ。

また受験には部局の推薦が必要とされている。さらに、これは公募なので、現在東京大学で働いていない人も受験可能だという。パート教職員にいたっては、そもそも勤務時間をフルタイムに変える必要があり、試験を受けることを躊躇する人が多いのではないだろうか。

 

大学側は「この試験に合格すれば無期雇用になるので、試験を受けてほしい」と、誰でも受けられることを強調するが、組合側が「試験に受からなかった人はどうなるのか」と質すと、大学側は「試験に落ちた人を保障する必要はない」と回答。つまり、試験で落としてしまえば、その職員を再度雇う必要はない、ということのようだ。

試験に受からない場合は「その人の責任」で、不合格によって雇用が途切れるのは大学側の責任ではない、という理屈をつくるための制度だ、と組合側は受け取っているという。

組合側は、そもそもこの「東大ルール」は、改正労働契約法の趣旨に反していると指摘している。改正法は「雇用の安定を図るという趣旨で設けた」という政府解釈が国会でも示されており(2012年7月25日衆議院厚生労働委員会)、いま働いている人を雇い止めにすることは、法律の目指すところとは全く逆の行為になる、ということだ。

ところが大学側は、団交の場で「この提案は決して法律の趣旨には矛盾していない」と言い張り、「東京大学の業務の特性上致し方ない。部局ごとの事情もあり統一した対応は困難」と主張した。

これでは話にならないと、大学と組合の交渉は平行線のまま終わってしまった。

東京大学教職員組合は、「ゼロ回答は受け入れられない」と通告。首都圏大学非常勤講師組合とともに、東京労働局に東京大学への指導を申し入れる方向で検討を始めた。

また、首都圏大学非常勤講師組合は、事実上の就業規則変更が届け出されていないことを問題視し、大学を労働基準法違反で刑事告発することも検討しているという。

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