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司法書士にあり得ない暴力を振るわれた、被後見人の悲劇

成年後見制度の深い闇 第4回
長谷川 学 プロフィール

誰に監督する責任があるのか

処分書ではその理由として、<被処分者は、事実関係を認めて深く反省し、二度と成年被後見人等に対して暴力を行わない旨、確約している事情も認められる>としている。要するに、本人が「反省しました。二度とやりません」と言っている、ということが根拠だということなのだが、どこまで説得力があるかは疑問だ。

T司法書士のその後だが、事務所のホームページを見ると、これまで通り成年後見業務を続けているようだ。そのページでは成年後見制度について、こう書かれている。

「正常な判断能力のない方が、悪質な業者らに食い物にされている。(中略)こうした方々の保護者となり、判断能力が減退した方の財産を保全し、権利を守り、不利益を被らないようにするため(中略)成年後見制度をお考えの方は、ぜひご相談ください」

むろんホームページでは、自分が被後見人に暴力をふるい、処分を受けたことについて、一言も言及していない。

 

後見人による暴力事件は、被害者が認知症高齢者や知的精神障害者であることから、中々、表沙汰にならない。そのため、この事件は氷山の一角に過ぎないと指摘する専門家もいる。

介護施設などで職員による暴力事件が起きた場合にも、被害を受けたお年寄りが自らの思いを語ることが難しく、家族が隠し撮りのビデオなどを設置してはじめて、実態が明らかになるのと、構図は似ているだろう。

では、こうした専門職後見人の監督責任は、誰にあるのか。それは、彼らを選任した家裁だと考えるのが自然だ。

しかし、この事件でも、家裁側からは自身の責任に関して、一切の言及はない。

また、一般社団法人「後見の杜」の宮内康二代表は、家裁に加えて、日本司法書士会が成年後見業務を推進するために作っている公益社団法人「成年後見センター・リーガルサポート」にも責任があるだろうと話す。

「リーガルサポートは、司法書士に業務の教育をし、後見人として家裁に推薦しています。各都道府県に支部を持つ全国組織ですが、会員司法書士による不祥事が複数発覚しており問題視されています。業界団体として、自身の管理・監督責任を重く考えるべきでしょう」

現実として、司法書士が専門職後見人として家裁に選任されるためには、リーガルサポートの推薦が大きな意味を持つ。法律に定めがあるわけではないが、「ほぼ必須の資格のようなもの」と話す司法書士もいる。業界内の内輪のルール、あるいは司法の”忖度”と言っていいだろう。それほど権力を持つ団体ならば、ひるがえって会員の業務態度にも責任を持つべきだ。

いずれにしても、今後とも司法・行政そして業界団体が、成年後見制度を現在のように推し進めていくのなら、類似の事件が繰り返されないためにも、全国の家裁や弁護士・司法書士の団体が、監督責任を果たす姿勢を積極的に発信していく必要があるのではないか。

(第5回はこちらから