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司法書士にあり得ない暴力を振るわれた、被後見人の悲劇

成年後見制度の深い闇 第4回
長谷川 学 プロフィール

従わないことにいら立って…

そもそも、成年後見人になりたい専門職は、事務所所在地の家裁に「成年後見人候補者」として自ら登録をすれば、やがて家裁から声がかかるという仕組みになっている。

登録の時点では、誰の後見人になるかはもちろん不明だ。家裁から就任を打診された時点で、後見人就任を断ることもできる。実のところ、就任を断るケースが多いのは、被後見人が十分な報酬を支払う余裕のない貧困層であった場合だと指摘する専門家もいる。

T司法書士が事件を起こしたのは、成年後見人になって2年半後の'13年3月頃。処分書には、こう記されている(文中の「被処分者」とはT司法書士のこと)。

<(T氏は)前後2回にわたり、○県内の成年被後見人方付近路上等において、成年被後見人の胸ぐらを左手でつかみ、右手でその胸の辺りを叩いたり、成年被後見人の尻を右ももで蹴るなどしたものである。……(中略)……以上の事実は、当局及び東京司法書士会の調査から明らかである。被処分者は、成年被後見人が被処分者の指導に従わないことなどにいら立ち第一の行為に及んだものである>

後見人は、家裁から、認知症高齢者本人の代理権や法律行為の取消権、同意権などの強力な法的権限を与えられている。被後見人とその家族は、財産の処分や契約など、さまざまな社会的な行為について、後見人が認めない限りは事実上何もできない。認知症高齢者らの生殺与奪の権限を握っていると言っても過言ではないのだ。

そのオールマイティーの権力を持つ後見人から、暴行を受けたのだ。被後見人や家族の恐怖と絶望の大きさは想像するに余りある。

 

このため、処分書もT司法書士の行為を<国民の権利の保全に資するべき責務を有する司法書士としての自覚を欠き、司法書士に対する国民の信頼を著しく損なう行為>だと批判し、司法書士法などの違反に当たると指摘している。

ではT司法書士に対しては、どのような処分がなされたのだろうか。実は、戒告処分という最も軽い処分を受けたにとどまった。司法書士の業務は停止されず、今後の成年後見人就任も禁止されてはいない。