学校では習わなかった…日本を襲う「悲劇的な未来」を回避する方法

「未来から見た日本」と「過去から見た見本」
堤未果×矢部宏治

アメリカを変質させた「愛国者法」

矢部: 堤さんのご本は、翻訳されてるんですか。『貧困大国』シリーズとか。

堤: はい数ヵ国で翻訳されています。外国の読者からもお手紙をいただきますよ。

矢部: アメリカではどうですか。

堤: じつは何度もオファーが来ているんですが、いろんな事情からまだやっていません。そろそろやってもいいかなと話しているんですが。

矢部: これはいま、アメリカ人こそが読むべき本ですね。

堤: そうですね。本の内容はアメリカの大学や国連のイベントなんかで何度も講演しているんですけど、そうするとやっぱりすごく関心が高くて、質疑のコーナーが大変盛り上がりますね。アメリカ人も各国の人たちも、1つ1つの細かい事よりもむしろ、いま社会の中で起きている事のビッグピクチャーや構造を知ることができて刺激された、これから自分の国や所属機関に戻って、このことをもっと掘り下げて議論したい、という声が多かったです。

矢部: そのとき各章の扉ページには、このぼうごなつこさんのマンガを。

堤: ぜひ!お力を貸してください。(笑)

最後に『増補版 アメリカから〈自由〉が消える』についてですが、先日施行された共謀罪、あの本家本元である「愛国者法」が、じわじわと長い時間をかけてアメリカ社会や普通の人々の暮らしをどう変質させて行ったかが詳しく書いてあります。

共謀罪もあの法律だけピンポイントで見ると全体像がわかりづらいですけど、あれは単なる骨なので、そこに組み合わされる他の関連法だったり、日米間の安全保障問題や、アメリカを始め国際社会で急激に進む監視化と警産複合体の拡大、デジタル技術の進化など、全部組み合わせて相対的に見ることで、その先の未来が透けて見えてきます。

愛国者法が9・11直後にスピード可決された時、私はまだニューヨークに住んでいましたが、あのときのアメリカでもやっぱり日本の共謀罪と同じで、「反対するのはやましいことがある連中だけだろう。普通に生きていれば関係ない」という空気が流れていました。テロ直後で国全体を恐怖が覆っていたし、マスコミが中味をちゃんと報道しなかったせいもあり、反対の声はほとんどあがりませんでした。

でもね、こういう法律の効果というのは、急にはでないんです。それは時間をかけてじわじわと、社会の隅々が、暮らしの中で感じる空気が、音もなく変わっていくものだからです。

いきなり町に鉄条網ができるわけでもなく、独裁国家のように市民が日常的に暴力で口をつぐまされる訳でもなく、普通に選挙も行われ、テレビを付ければニュースが流れ、新聞も昨日と変わらず配達されてくる。顔を上げればいつもと同じ日常が広がっているので一見何が起こっているかわからないのです。

大学で憲法を教えていたある教授は、「危険因子リスト」に入れられて飛行機に乗れなくなってしまいました。彼はこう言っていました。「無関心でい続けたことで、アメリカ人は想像力と引きかえに、いつの間にか【自由】を奪われてしまった」。

ちなみに最新情報は、この袋とじの中にですね、これ(笑)。ここは立ち読みできないので皆さん、ぜひわくわくしながらマイハサミで開けて下さいね。

矢部: 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

堤: こちらこそ、どうもありがとうございました。

矢部宏治さん(左)と堤未果さん

本稿は、7月14日に都内で行った対談を再構成したものです。盛り上がったお二人のやりとりを動画でご覧になりたい方は、こちらをどうぞ。

アメリカから自由が消える
核大国ニッポン
知ってはいけない
堤 未果(つつみ・みか)/ 国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学、ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、アムネスティ・インターナショナルNY支局員、米国野村証券等を経て現職。日米を行き来しながら各種メディアで発言、執筆、講演を続けている。「ルポ貧困大国アメリカ」(3部作:岩波新書)で新書大賞2009・日本エッセイストクラブ賞、「報道が教えてくれないアメリカ弱者革命」(海鳴社)で2006年度黒田清日本ジャーナリスト会議新人賞。夫は参議院議員の川田龍平氏。
矢部 宏治(やべ・こうじ)/ 1960年兵庫県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。株式会社博報堂マーケティング部を経て、1987年より書籍情報社代表。著書に『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』(以上、集英社インターナショナル)、『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること――沖縄・米軍基地観光ガイド』(書籍情報社)、共著書に『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』(創元社)。企画編集に「〈知の再発見〉双書」シリーズ、「J.M.ロバーツ 世界の歴史・日本版」(全10巻)、「〈戦後再発見〉双書」シリーズ(以上、創元社)。

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