学校では習わなかった…日本を襲う「悲劇的な未来」を回避する方法

「未来から見た日本」と「過去から見た見本」
堤未果×矢部宏治

たとえば日本でも今「TPP」とか「RCEP」「TISA」などの国際交渉がニュースに出るようになりましたよね。この間も日欧EPAが決まったでしょう。ああいう国際交渉でも、ますます企業弁護士が大活躍するようになっています。

日米安保って16ページぐらいですか? TPPは何千ページ。どうしてこんな違うんだろうと思ったことがあったんです。ウォール街の元同僚に聞いたら、国際交渉に企業弁護士が入れば入るほど、国家同士の条約といってもう企業間の契約書レベルになるから当然だと。

矢部: すごいですね。

堤: 弁護士が作るからあっという間に何千ページにもなる。

矢部: 安保条約って、全部で10ヵ条ですから、本当に短いんですよ。地位協定はちょっと長いですけど、大したことない。講和条約もそう。だけど堤さんもよくご存じのとおり、メインの条文の流れじゃなくて、その外側に1行、例外条項みたいのを入れるんですよ。

国連憲章そのものがまさにそうで、われわれ日本人にとって重要なのは、国連憲章におけるそういう例外条項をつくったのが、やっぱりダレスだということなんです。だから日米安保の問題を考えるときは、その地点までさかのぼって、国連憲章の条文を読み解く必要があるんです。

 

堤: TPPの条文も、実は例外条項がいちばん大事な部分でしたよね。

矢部: そうです。もう間違いないですね。1行だけ入れるんですね。「ただし何々のときは」って。それが、他の条文をすべてひっくり返すような力を持っている。

国連憲章51条に入れられた「集団的自衛権」がまさにその典型で、ここで国連の本来の創設理念は大きく損なわれてしまった。そこから憲法9条をめぐる日本国内の混乱も始まるわけです。この条文を国連憲章に書き加えたのも、実はダレスなんです。

堤: それで全体のピクチャーが見えたんですね。

矢部: 要するに対米従属の根幹に、軍事の問題があるということです。よく「占領体制の継続」と言いますけど、もう少し正確に分析する必要があって、政治と経済に関しては、法的な支配関係はもうないんです。ただ軍事にはある。しかもそれは「占領体制の継続」よりももっと悪い「占領下の戦時体制」の継続だったということがわかりました。

堤: なるほど、わかりやすいですね。

矢部: 堤さんが『増補版 アメリカから<自由>が消える』で書かれているような、アメリカ政府が自国を「対テロ戦争」という有事下にいつまでも置いておくことによって、2001年以降、合衆国憲法のかなりの部分が機能停止してしまっているという状況。同じようなことが、日本では占領中におきた朝鮮戦争(1950〜53年)以降、ずっと続いているということです。

もっといい未来を選ぶことはできる

矢部: この『グラウンド・ゼロがくれた希望』(扶桑社文庫)という本は読んでなくて、今回初めて読んだんですが、文章がすばらしいですね。

堤: ありがとうございます。

矢部: この本とこの『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』(新潮文庫)というのは、一人称で書かれているノンフィクションで、すごく文芸的な文章なんですね。

堤: ありがとうございます。

矢部: 胸を打ちますよね。

堤: うれしいです!

矢部: いつかまたこういう一人称のノンフィクション読んでみたいですね。

堤: そうですね。エッセイのリクエストはけっこうあるので、企画を考えてみます。

矢部: この中で、文庫版のあとがきで、書名に『希望』という言葉を入れたことで、最初は批判もあったけど、いま思うと本当によかったと述べておられます。そのことについてちょっとお話ししていただいていいですか。

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