学校では習わなかった…日本を襲う「悲劇的な未来」を回避する方法

「未来から見た日本」と「過去から見た見本」
堤未果×矢部宏治

日本の空は、すべて米軍に支配されている

矢部: もう7年ぐらい研究してきて、日本のおかしな現状について、知っている方も増えてはいると思うんですが、まだ全然足りない。たとえばこの横田空域ですね(上記の四コマまんが参照)。首都圏上空が、米軍の管理空域となっている。

堤: これは、この1枚の絵でみるだけでも相当ショックな事実ですね。

矢部: こういうことは他の国では絶対ありません。それから問題の日米合同委員会ですね。広尾に米軍の施設があって、そこと外務省で毎月2回、日本のエリート官僚と米軍のトップたちがもう60年以上、必ず会議をしている。そこで決まったことは国会にかける必要もないし、公表する義務もない。憲法の制約も受けない。何でもできるんですね。

堤: すさまじい特権ですね。

矢部 これもさっき堤さんがおっしゃったように、みんな最初は「そんなことあるはずない」と言うんですね。でも、本もトータルで7、80万部売れてるんで、だんだん認知されてきました。しかしまだ全然足りない。少なくとも1000万人単位の日本人が、常識として知っておくべきことだと思っています。

 

堤さんの目から見て、こういう過去から現在に続く日米の法的構造は、どういうふうに映っていますか?

堤: すごく重要な要素だと思います。たとえば戦後72年を迎える今、戦争をめぐるさまざまな議論が高まり、国民的な声が高まり、毎年8月には戦争報道が溢れますよね。

けれど私たちがそうした議論を、その時だけでない、本当に未来に続く発展的なものにするためには、私はその軸となる2大要素は、「お金」と「法律」だと考えています。

矢部: そうですね。ほんとにそこがもっとも重要なポイントだと思います。

堤: 法律というのは情緒的になりようがないでしょう? それから色がついてない。それができた時代背景はあるけれど、その存在は確固たる事実として横たわっているから、左右真ん中など政治的思想に関係なく、その事実から共に議論をスタートさせられます。

矢部: 関係ないですね。

堤: アメリカは特に他民族で情緒的な誤解が殺し合いになる国ですから、契約やルールが重視されます。だから企業が利益拡大のために政治やアカデミズムや司法を買う「コーポラティズム」も、あれも全て合法でやっている。

日本も官僚や行政は法律に沿って動きますよね。マスコミは皮膚感覚で反応が来る政治家の発言や人間性、スキャンダルや政局を中心に取り上げるので、私たち有権者もつい政治家個人や政局をみてしまうけれど、本当は社会を確実に変えている「法律」の方に目を向けることが大事なんです。

矢部: 法律のすごいのは、1回つくってしまうと、スピードの差はあっても、いつかは実現してしまうということですよね。みんなが忘れたころに。

堤: はい、必ずしますね。

矢部: 法律は死なないですから。人間はやがて死ぬけれど。

堤: おっしゃる通りです。

矢部: そのお金と法律という切り口が、堤さんがまさにコーポラティズムの分析などで使っておられる武器ですね。だからぼくも堤さんの本を読んでいて、「あっ」と思ったんです。

それはいま、われわれ日本人が置かれている世界的に見ても非常に特殊な状況というのは、ジョン・フォスター・ダレス(日米安保や東西冷戦構造の産みの親。アイゼンハワー政権で国務長官も経験)という非常に頭のいい人間が、主に米軍との調整をしながらつくった体制なんですが、彼がまさにウォール街出身の弁護士なんです。

親族から国務長官が二人出ているから、そういう基盤もあるんだけど、もともとはウォール街で大活躍した辣腕弁護士なんです。アメリカのほんとのトップの弁護士というのは、大企業の問題だけではなく、そういう講和条約を仕切る。ドイツ統合のときもそうだったみたいですが、講和条約を仕切って、そこでできた新体制にアメリカ資本を入れ、自分の関係する企業に利益を与える。それが最高の仕事なんです。

そしてやはり戦後日本のスタートのところにも、そういうお金と法律を同時にあやつるダレスという人間がいて、現在までの体制が作られたということですね。

ウォール街の弁護士の典型的な手法

堤: 矢部さんの本の中で特にあの部分は、金融業界にいた立場としてはすごく腑に落ちたし興味深かったです。ウォール街の弁護士の典型的な手法ですね。朝鮮戦争が起こったときに、マッカーサーのメンツを守ることと引きかえに、日本を軍事的に利用する流れに持って行くという最大目的も達成したエピソードは非常にわかりやすいです。

あの交渉術が日本の運命を大きく変えてしまった訳ですが、外交の世界ではあれがスタンダードですから、あの章(『知ってはいけない』第9章)はとても参考になると思いました。

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