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「サロン・ド・シマジ」のバトラーはモスクワでウイスキーに開眼した

タリスカー・ゴールデンアワー第5回(前編)

水間: 振り返ってみますと、やはりラガヴーリンとの出会いでしょうか。

シマジ: 「初心者向け」という言葉があるけど、葉巻でもウイスキーでも、すべての世界で言えることは、初心者/上級者なんて関係なく、最初からポート・エレンを飲むとか、コイーバを吸うとか、いわゆる“別格”の味を早く知ることこそが、その世界の真実に迫る早道ではないでしょうか。ボブはどう思いますか?

ボブ: そうですね。なんとなくウイスキーを飲むよりも、“極めつけ”を飲むほうが、やっぱりインパクトがちがうでしょうからね。ぼくもシマジさんの意見に賛成です。で、水間さんがはじめてラガヴーリンを飲んだのはいつだったんですか?

水間: ぼくは石炭を輸入して売っているんですが、その仕事の関係で行ったモスクワのホテルのバーでした。全体会議が終了してほっとしたときに同僚のみんなとバーに行き、そこで勧められるままに飲んだのが、ラガヴーリンでした。

正直、そのときは、「うえっ、なんだこの正露丸みたいな匂いは!」と思ったんですが、日本に帰ってきてからも好奇心からちょくちょく飲むようになって、いつのまにか癖になってしまったんです。たしか、あれは2011年のことでした。ですから、わりと最近と言えば最近ですね。

ボブ: なるほど。ちなみにタリスカーをはじめて飲んだのはいつごろですか?

水間: それはサロン・ド・シマジへ最初に行ったときでした。このタリスカースパイシーハイボールを飲んで仰天しました。それからというもの、病みつきになり、食事のときは、ご主人さまの驥尾に付していつもこれを飲んでいます。

ヒノ: じかあたりしたときですか?

水間: そうです。この座談会があるので手帳を調べてみたら、2015年2月のことでした。

ボブ: おかげさまで、シマジさん経由でタリスカーを知ったという方が凄く多いですね。社長に成り代わって改めて御礼申し上げます。

シマジ: ありがとうございます。タリスカーはまちがいなく安定した美味いシングルモルトですよ。あのうるさいマイケル・ジャクソンだってタリスカー10年に90点の高得点をつけているくらいですから。

水間: 実際、タリスカー10年は、毎日曜日、ぼくの目の前で飛ぶように売れていますからね。日本有数の売り上げを誇っているのがよくわかりますよ。しかも実質的には土日だけのバーですから。

シマジ: 忙しいときは、1日2本は空になるんですよ。

ボブ: 水間さんは日曜日にシマジさんのところで“バトラー”をされていますが、普段は月曜から金曜まで石炭輸入会社の社長をされているそうですね。

シマジ: 水間の会社は、あの丸の内ビルディングのなかにあるんですよ。

水間: 29の炭鉱を持っていて、そこで掘った石炭を日本に持ってきて売っているんですけど、うちはマイナーな会社ですよ。

ヒノ: たしかロシアの会社の日本支社なんですよね。

水間: 厳密に言いますとモスクワが本社で、その100%子会社がスイスにあって、その下にぶら下がっているような感じです。なので形式的には親会社はスイスの会社です。

ボブ: そしていま、シマジさんのサンデーバトラーを悠々としてやられていると……。ご結婚は、されているんですよね?

水間: はい。9歳の男の子がいます。

ボブ: それで毎日曜日、よくそんなに長い時間、家を空けられますね。

シマジ: 水間の奥さんは良妻賢母だと思うんです。「あなたが今よりチャーミングな男になるならいいですよ。日曜日、息子と我慢します」て言ってるそうですよ。いまそんな女性は日本中探してもなかなか見つからないですよ。

水間: シマジさん、そういう話も書くんですか?

シマジ: いいじゃないか。こんな美談はそうそうないよ。第一、奥さんは読まないだろう。

水間: まあ、読まないですけどね。うちの女房はシマジさんの奥さんタイプなので、まったくぼくに干渉しないんです。でもシマジさんがよく言っている“愛ある無関心”なので大丈夫です。

ヒノ: 奥さんはバーでサンデーバトラーをやっている水間さんを見に、伊勢丹に来たりはしないんですか?

水間: それもないですね。「わたしもシマジさんの奥さんを真似る」と言っています。新幹線でも隣には座らないと言っています。

シマジ: その格好じゃ、恥ずかしいんだろうな。

水間: サロン・ド・シマジだけにしてくれと言っています。

ボブ: 凄くお似合いですけどね。

水間: ぼくがこういう格好をしていることは、妻はまったく知りません。

シマジ: ああ、だから昨日、伊勢丹からおれの仕事場にスモーキングジャケットを置きにきたのか。お前も可愛いところがあるんだね。ますます気に入った。そうすると、帰りにまたうちに預けていって、今度の日曜日は広尾にきて、そしてまた伊勢丹に預けるんだな。

水間: ご明察でございます。

シマジ: わかった。水間のためならいくらでも共犯者になろうじゃないか。

〈⇒後編につづく

水間良雄(みずま・よしお)
1975年、盛岡生まれ仙台育ち。英国イースト・アングリア大学大学院修士課程(開発学)修了後、日商岩井(現・双日)に入社。2005年に豪英系資源会社へ転職後、2010年に独立し、ロシア最大の石炭会社の日本法人を立ち上げ代表取締役社長就任。毎週日曜、伊勢丹メンズ館8階の「サロン・ド・シマジ」にて島地勝彦公認バトラーとしてお手伝いをしている。
島地勝彦(しまじ・かつひこ)
1941年、東京都生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。『週刊プレイボーイ』『PLAYBOY』『Bart』の編集長を歴任した。柴田錬三郎、今東光、開高健などの人生相談を担当し、週刊プレイボーイを100万部雑誌に育て上げた名物編集長として知られる。広告担当取締役、集英社インターナショナル代表取締役を経て、2008年11月退任。現在は、コラムニスト兼バーマンとして活躍中。 『甘い生活』『乗り移り人生相談』『知る悲しみ』(いずれも講談社)、『バーカウンターは人生の勉強机である』『蘇生版 水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』(CCCメディアハウス)、『お洒落極道』(小学館)など著書多数。
ロバート・ストックウェル(通称ボブ)
MHDシングルモルト アンバサダー/ウイスキー文化研究所認定ウィスキーエキスパート。約10年間にわたりディアジオ社、グレンモーレンジィ社、他社にて、醸造から蒸留、熟成、比較テイスティングなど、シングルモルトの製法の全てを取得したスペシャリスト。4ヵ所のモルトウイスキー蒸留所で働いた経験を活かし、日本全国でシングルモルトの魅力を面白く、分かりやすく解説するセミナーを実施して活躍しています。