「フィリピンパブ嬢のヒモ」だった僕が結婚し、子供が産まれるまで

僕は日雇い労働へ、嫁は臨月までパブで働く
中島 弘象 プロフィール

それでも看護師は、

「まだ子宮口の開きが足りないね。もう少し頑張って歩いてね」という。その言葉を聞きミカは、「眠いし、痛いし、もう死にそう。早く産まれてよ!!」

額は汗でびっしょり。見ているこっちまで辛い。午前4時。2日間ミカは痛みに耐えながら寝ていない。

朝7時。僕の母とミカの母が病院まで来た。

「ミカちゃんもう少しだよ。頑張って」

僕はどうしても外せない用事があったため、2人の母と交代して病院を出た。

 

カット!! オープン!!

外に出ている最中、母からミカの状況をLINEで伝えてもらう。

昼前、「帝王切開になったよ」とLINEが入った。

僕は急いで病院に戻ると、ミカは酸素マスクをつけてベッドに横たわっていた。

ミカの母が目を真っ赤にして、ミカの手を握っている。ミカは息が荒く、目を開いて、苦しそうにしている。

僕が「大丈夫か!?」と聞いても「うぅぅぅ!!」と唸るだけだ。

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「旦那さんですか!? 今から帝王切開します。手術室の前まで一緒に来てください!!」

ベッドの前と後ろに看護師が付き、僕はミカの手を握りながら手術室まで向かう。

手術室に入る扉の前で、最後にミカは「オペ痛いかな……?」と小さな声で僕に言った。

「痛くないと思うよ。すぐに終わるから。少しだけ頑張って!」

「わかった……頑張るね……」

ミカは手術室の中に入っていった。

自動扉がゆっくりと閉まる。僕は手術室の前に立ち尽くした。

「無事に戻ってきてくれ」

ミカがそばにいることが当たり前になって気づかなかったが、こうしていなくなってしまうかもしれないという時に大切な存在だと気づかされる。

僕はとてつもない寂しい気持ちに襲われた。

病室に戻ると、僕がいなかった間のことを母が説明してくれる。

ミカが分娩台に上がり、赤ちゃんを取り出そうとするが、出てこない。何度も取り出そうとするが、出てこず、とうとう赤ちゃんの心音が下がってしまった。実はこの時、ヘソの尾が首に巻きついていたのだ。

立ち会っていた2人の母は病室から出され、外から何人もの看護師が走って病室までやってくる。

日本語がわからないミカの母は、何が起きたかわからず、パニックになり泣き出す。

病室からは「あぁぁぁぁ!!!」とミカの悲鳴が聞こえる。

いてもたってもいられなくなったミカの母は、何度も部屋の中に入っては、看護師に外に出される。

中から医師が出てくると、

「これから帝王切開します。お義母さんですか? 同意書にサインしてください」