提供/DGコミュニケーションズ
中古マンションの価格を部屋ごとに検索できる画期的なサービスが誕生した。不動産広告大手のDGコミュニケーションズ(東京都港区)が運営する『家いくら?』がそれだ。
少子高齢化や人口減少を背景に、不動産市場は大きな変化の時期を迎えていると言われるが、ここで新たなサービスを打ち出した狙いは何なのか。これからどんな将来を見据えているのか。同社の取締役コミュニケーションデザイン本部長・石鍋紀彦氏に話を聞いた。(取材・構成/現代ビジネス編集部)
不動産関係者と話していると、ときどき「住宅を資産だと考えないほうがいい」
ただ、だからこそ、と私は考えます。多くの場合、住宅は子どもに相続させることになります。もしその価値をふだんからしっかり把握していないとすれば、それは子どもたちに負債を残すことになりかねません。だから、あえて私は、住宅の「資産価値」を常日ごろからしっかりと考えておくべきではないか、と言いたいのです。
たとえば、子どもが学校を卒業して家を出たのに、学区を理由に選んだ家に住んでいるとか、車に乗らなくなったのに地下駐車場が完備されているマンションに住んでいるとか、定年退職したのに通勤に便利な駅近に住んでいるとか……。資産価値の視点から真剣に考えてみたとき、買い替えを検討する余地はまだまだあると思うんです。
もちろん、家はモノと違って、住んでいる土地への愛着や、近所づきあいなど、合理性だけで割り切れない面があるのは十分承知しています。東日本大震災で、地域のつながりの大切さをあらためて思い知らされた我が国では、なおさらです。
それでも、状況に応じて家を買い換えることで、生活が良くなるチャンスがあるということは少なくとも知っておいてほしい、といつも思っています。
私たちが先日ローンチさせた新サービス『家いくら?』の柱は、ひと言で言えば、住宅の資産価値が即座にわかる「査定エンジン」です。私たちが開発したこのエンジンを使うことで、不動産屋さんに問い合わせることなく、
また、住宅ローンなどの情報を入力することで、それぞれの家計において、住宅関連の費用がどうなっているのかを見える化できます。言ってみれば、「住宅の家計簿」ですね。
今後は、『家いくら?』のユーザーが、
実は、中古マンションの価格については、これまで業界の慣例や行政による規制があり、一方で自らの保有する不動産の価値を知られたくないというプライバシー的な面もあり、なかなかパブリックな検索エンジンなどで調べることはできませんでした。
今回それが可能になったのは、テクノロジーの発展のおかげです。私たちが長い時間をかけて積み重ねてきた不動産関連の知見と大量のデータを人工知能に読み込ませることで、かなり高い精度で住宅価値の資産を推定できるようになりました。そのコストが私たちの手が届くところまで絞られてきたことも大きいです。
とはいえ、初期の開発を終えてサービスをローンチさせたいま、私たちが感じているのは、ちょっと矛盾するようですが、技術優先ではいけないということなんです。
ありとあらゆるデータを人工知能に与えて、私たちにその思考プロセスは(グーグルの囲碁プログラム「Alpha GO」のように)一切読めないけれど、結果出てくる数字の精度はとにかく高い、というサービスも考えました。しかし、人が住む家について、そのやり方は適切なんだろうか、という疑問が最後まで消えなかったのです。
私たちが選んだのは、自分たちの経験から、住宅価値の形成に決定的に有効であろうというバロメータを取捨選択して、それに関する大量のデータを人工知能に読み込ませる手法でした。
正直なところ、日進月歩のテクノロジーの世界で、私たちが納得いくような新しい技術が出てくる可能性は十分あります。そうした技術をこれからも貪欲に取り込んでいくつもりです。
ただ、どんな技術が登場するとしても、私たちは家族とのかけがえのない時間を過ごす「住宅」を取り扱う以上、まったくコントロールできない技術にすべてを委ねるという選択肢はありえないと思っています。
私たちが『家いくら?』を通じてやりたいのは、価格査定の技術を売って儲けることではなくて、マンションを所有している方々が、どんなことで悩んでいるのか、何を必要としているのかを探り出し、そのソリューションを生み出していくこと。そのためには、プロセスがブラックボックスでは困るわけです。