働きたいのに働けない!「最高益」でも電通社内は大混乱

「22時退社」効果で国内売上減…?
週刊現代 プロフィール

結局、家で仕事する

同社員がため息交じりに言う。

「22時退社が始まり、クライアントへの対応が十分にできなくなったことで、すでにいくつかのクライアントがほかの代理店へと鞍替えを考えているのではないかと、営業の社員のあいだで話題になっています。実際、いつ博報堂の扱い(広告の取り扱い)が増えてもおかしくないと思う」

そうした動きはすでに始まっているかもしれない。

「アサツーディ・ケイ(ADK)は電通の枠を狙おうと、テレビ局への営業を強めると見られています。また、電通の件との因果関係ははっきりしませんが、6月の売上高は、博報堂が前年同月比で増やしています」(前出・記者)。

 

働き方改革は難しい。もちろん自殺に追い込まれるほどの長時間労働は規制されるべきだろう。

しかし、無理やり社員を頭から押さえつけるように労働時間を規制すれば、仕事を処理できなくなり、混乱が生じる。もちろんクライアントからの信頼を失う可能性もある。

とくに電通の場合、時間をかけて質の高い提案を練り上げる、という社員が多い。中には、本当はもっと働きたいのに強制的に帰らせられ、ストレスを感じている社員もいる。40代の営業職の社員が語る。

「営業職は、博報堂やADKといった競合がいる重要なプレゼンの際には、朝4時までプレゼン資料をつくって、数時間後にはクライアントに提案する。先方から修正が入ればまた明け方まで頑張ってプレゼンを行うというサイクルを繰り返す時期があります。キツいですが、頑張っただけ信頼を得られる。

『絶対にウチがいちばんいい提案をするんだ』という思いで仕事をするのが代理店マンのやり甲斐です。ところが、22時以降は会社で仕事ができず、メールのやり取りも禁止されてしまった。家に仕事を持ち帰ることもありますが、会社での作業よりも効率が悪い。納得がいっていない社員は少なからずいます」

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30代の営業職の社員も首をかしげる。

「プロモーションを行う際、優秀なスタッフをアサイン(チームに加えること)できるかどうかでクライアントからの信頼度が決まります。

ソフトバンクの『白戸家』シリーズや東京ガスの『ガス・パッ・チョ!』などを手掛けた澤本嘉光さんのような有名クリエイターはそもそもアサインしづらいのですが、22時退社が決まったせいで以前にも増して時間を取りづらくなっている。

働時間短縮は時代の趨勢だとは思いますが、いままで通りクライアントに満足してもらうことができるかどうか疑問です」

さらに、大量の仕事を抱える社員は、提携先の会社の一角で仕事をしているとも報じられたが、実際、結局自宅に仕事を持ち帰る社員はいる。前出の経済部記者が語る。

「電通は東京五輪の組織委員会のプロモーションを一手に請け負っています。イベントの現場などで電通の社員が『残業禁止だから、仕事も持ち帰りです』と言っているのを聞きます。

五輪の現場は、『〇〇日前イベント』や会見など仕事が多いですから。最近になって小型のノートパソコンを使い始めた社員も複数いました。おそらく自宅で使うために購入したんでしょう。結局、仕事を家に持ち帰るのなら、働き方改革が効率を下げている側面もあると思います」