Uberを窮地から救えるか? アリアナ・ハフィントンの挑戦

シリコンバレーの曲がり角で
池田 純一 プロフィール

その彼女が、いつの間にか、Uberの未来を決める大任を担うことになった。

実際、アリアナは、2017年6月、ネスレのアジア総括担当のウォン・リング・マーテロ女史をスカウトし、Uberのボードメンバーに加えた。

ネスレにおける「リコール(問題ある商品の回収)」の経験を重視してのことだった。スキャンダルのさなかにあるUberにおいてマーテロの手腕が、Uberブランドの失地回復において活かせるのではないかと考えたからだといわれる。そうして、アリアナはUberのボードメンバーとしての影響力を増している。

極端な業績第一主義

このようにアリアナは、ボードメンバーの一人として、今回のUberの不祥事・醜聞による「企業価値の毀損」からの回復に注力しようとしているのだが、どうもそれだけにはとどまりそうもない。

彼女からすれば、この不祥事・醜聞は、ひとりUberというスタートアップの問題だけでなく、シリコンバレー全体の問題と捉えており、その「修繕(fix)」に並々ならぬ意欲を示している。

簡単にいえば、シリコンバレーの起業文化のうち、「ワイルド・ウエスト(荒野)」を気取ったマッチョな文化の部分を改善しようとする、より大きな動きに繋がりそうなのだ。

〔PHOTO〕gettyimages

ところで、当のUber騒動だが、これはすでに多くの報道がなされているので詳細はググッてもらうとして、以下に簡単に経緯を記しておこう。

直接の発端は、2017年2月に、Susan Fowlerという元社員の女性が起こしたセクハラの訴えと、具体的に彼女がブログで公開したUberの内情だった。

上司にセクハラされたという事実だけでなく、そのことを報告してもまともに取り上げようとしない人事(HR)部門。理由は、当の上司が実績を上げており、その実績の方を優先する空気が社内に漂っていたからだ。

極端な業績第一主義の企業文化が明るみに出されたわけだが、そこから芋づる式に様々な不祥事が明らかになっていった。

たとえば、各地における市当局からのUberへの監督を避けるためにGreyballというアプリを開発・実装し、役人や警官が試しにUberを利用することを迂回しようとした。

あるいは、iPhone上でUberのアプリがデリートされても引き続きユーザー情報にアクセスできるようアプリに細工を加えたことでAppleのCEOであるティム・クックを激怒させたこともある。iPhoneからUberのアプリが抹消されてもおかしくはなかった。

さらにはインドでUberドライバーによる女性乗客に対するレイプ事件まで生じた。

もっともこうした営業現場における不祥事だけであれば、これほどまでカラニック個人に焦点が当たることはなかったのかもしれない。だが、彼自身がUberのサービスを利用した際、そのUberドライバーが発した不満に対して罵倒した記録が報じられることで、彼の公的印象は著しく悪くなった。

あるいは、カラニックが2016年末にドナルド・トランプが主催する経営者会議に参加したことも、リベラル寄りのユーザーの癇に障ったようで、“#deleteUber”という一種の不買運動をユーザーの間で起こさせていた。

シリコンバレーの起業家・経営者の多くがトランプ政権との関わりに一定の距離を置こうとしていただけに、彼の参加は――同じく参加を決めたイーロン・マスクとともに――ある意味でワル目立ちしていた。