「日本人は集団主義」という幻想

じつは根拠なんてなかった…?
高野 陽太郎 プロフィール

科学的な国際比較研究の結果は?

近年、心理学では、集団主義・個人主義をめぐって、「同じような人たち」を「同じような場面」で比較した国際比較研究が数多くおこなわれてきた。そういう研究の結果はどうなっているのだろうか?

そういった研究には、2つの種類がある。調査研究と実験研究である。

調査研究では、調査用紙を配って、そこに印刷してあるいくつもの質問に答えてもらう。「同じような場面」は、その質問によって設定されている。

たとえば、「あなたが忙しいとき、職場の同僚が1週間かかる仕事を手伝ってほしいと頼んできたとしたら、どれぐらい手伝いますか?」

「① 1日も手伝わない」から「⑤ 7日間手伝う」まで、5つの選択肢を用意して、それぞれの国の「同じような人たち」にどれかを選んでもらう。最初の「① 1日も手伝わない」を選べば「非常に個人主義的」、「④ 6日間手伝う」を選べば「かなり集団主義的」ということになる。

たくさんの質問への答を平均して、その人たちがどれぐらい個人主義的なのか、どれぐらい集団主義的なのかを推定するわけである。

 

一方、実験研究では、実験室に来た人たちに、なにか課題をやってもらい、そのときの行動を観察する。

たとえば、「同調行動」の実験では、ひとりで答えれば、まず間違いっこないような簡単な課題に答えてもらう。しかし、じっさいには、その課題に、ひとりではなく、ほかの何人もの被験者と一緒に答えてもらう。

じつは、その「ほかの何人もの被験者」は、みな「サクラ」なのである。かれらは、ときどき、全員そろって、あきらかに間違った答を言う。そのとき、ほんとうの被験者はどう答えるか?――それを観察するのである。

もし、被験者が皆に合わせて、そのあきらかに間違った答を言ったとしたら、「集団に同調した」ということになる。自分の判断をねじ曲げてでも集団に合わせるという「同調」は、まさしく「集団主義」の核心である。

この実験は、最初、「世界でいちばん個人主義的」といわれてきたアメリカ人を被験者にしておこなわれた。

何回、同調をしたか、その割合を示す「同調率」は、37%だった。その後、同じ方法で8つの実験がおこなわれたが、「同調率」の平均は25%だった。

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