「加計問題」と「ロシアゲート」あまりに酷似したフェイク戦略

世界は「印象操作」の時代に入った
海野 素央 プロフィール

コミー・前川両氏には、証言内容の具体性に加えて、もう一つ類似点があります。解雇後ないし退職後に証言を行ったことと、その「動機」です。

コミー氏には「ホワイトハウスからFBIの独立性を守りたい」という思いがあり、他方前川氏には「首相官邸によって行政がねじまげられたことを告発したい」という思いが存在します。言い換えれば、元政府高官として「権力の乱用を正したい」「行政ないし独立機関に圧力をかける政治家に抵抗したい」といった「正しい統治」の要求が告発の動機づけになっているようです。

 

⑸北朝鮮の核・ミサイル開発問題

ロシアゲート疑惑及び加計学園問題は、現在日米両国にとって懸案の、北朝鮮の核・ミサイル開発問題の解決を困難にしているという点においても類似しています。トランプ・安倍両氏は、それぞれが抱える疑惑払拭のために時間とエネルギーを割かざるを得ません。その結果、北朝鮮問題に十分にコミットできない状況に陥っています。

米メディアによると、トランプ大統領が朝イチの会議で真っ先に取り上げる議題はロシアゲート疑惑だといいます。同大統領は、弁護士チームから逐一状況報告を受けて対策を講じています。内政並びに外交・安全保障問題を十分に協議するために、政権首脳が毎朝のように、「フェイクニュース・メディアが騒ぎ立てているだけ」のロシアゲート疑惑を、朝イチで扱うというのです。

勿論、これは単なる言い訳に過ぎません。会議の内容から、トランプ大統領の胸の内が見えてきます。率直に言ってしまえば、自分の「クビ」と直結しているロシアゲート疑惑の対策を最優先しているのです。

おそらくトランプ大統領は通常であれば、先日2回目のICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験の成功を発表した北朝鮮に対して、最大限の圧力をかけるよう、中国にこれまで以上に強く働き掛けたことでしょう。

ところが、トランプ大統領は北朝鮮のICBM級のミサイル発射が事前に予想されていたにもかかわらず、ジェフ・セッションズ司法長官を辞任させるために、インタビューやツイッターを通じて彼に対する批難を続けました。さらに、7月25日のオバマケア改廃法案の審議入り前後には、造反した身内の共和党上院議員を批難していました。

先月ツイッターでトランプ大統領が行なった発言は、「北朝鮮」を含むものが7件だったのに対し、「ロシア」を含むものは16件でした。圧力の主な「矛先」がロシアゲート疑惑をはじめ国内問題に向いていたわけです。

トランプ大統領には思惑があります。セッションズ司法長官を辞任させ、次に就任する新長官に、ロシアゲート疑惑を捜査しているロバート・モラー特別検察官のクビを切らせるのです。さらにオバマケアを廃止に追い込めば、自身の掲げてきた最大の公約を果たし、疑惑から国民の目をそらせます。それほど、トランプ大統領にとってロシアゲート疑惑はかなりの重荷になっています。

一方で安倍首相は、衆参両院予算委員会での加計学園問題を巡る閉会中審査にそれぞれ出席し、反省の弁及び陳謝を述べました。しかし現在、これまでのように「丁寧に説明していく」というマジックはもはや効かなくなっており、疑惑の完全な払拭には至っていません。首相にとって加計学園問題は支持率の低下、ひいては自身の「クビ」と結びついているため、この点においてもトランプ大統領のロシアゲート疑惑と位置付けが類似しています。

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