「加計問題」と「ロシアゲート」あまりに酷似したフェイク戦略

世界は「印象操作」の時代に入った
海野 素央 プロフィール

余談ですが、筆者が大学院生だった時、白人の米国人女子学部生が当時問題になっていたビル・クリントン元大統領の女性インターンとの不倫問題に関して、「クリントン大統領の私生活と(大統領が成し遂げた)雇用創出は、切り離して考えている」と語っていました。この女子学生は「本当の争点は何か」を見失っていませんでした。

ロシアゲート疑惑並びに加計学園問題における人格攻撃には、相手の人間性に焦点を当てて争点を変えるという狙いがあります。従って、「話者の人間性と発言の内容を切り離して考える」ことがきわめて重要になるのです。

⑶どちらかが嘘をついている

2017年6月8日に開催された米上院情報特別委員会での公聴会で、前述したコミーFBI前長官は、トランプ大統領が捜査の渦中にあるマイケル・フリン元国家安全保障担当大統領補佐官に関して「彼はいい奴だ。彼を放っておくことを望んでいる」と述べた、と証言しました。

さらにコミー前長官は、トランプ大統領が彼(前長官)に「忠誠心」を求めた、とも証言したのです。大統領はこうした証言を全面的に否定し、2人の主張は真っ向から対立しています。つまり、大統領かコミー前長官のどちらかが明白な嘘をついているということになります。

 

加計学園問題においても、このような対立構図が鮮明です。2017年7月24日の衆院予算委員会で、前川前文科事務次官は、和泉洋人首相補佐官が「総理は自分の口からは言えないから、私が代わって言う」と語った、と証言しました。

これに対して、和泉氏は「言ってございません」「しなかったと思っています」「記録に残っていないので、私の記憶に従って答えるしかないのですが、言わなかったと思います」と再三述べて、前川証言を否定しています。

和泉・前川両氏の証言には明らかな食い違いがあり、少なくともどちらか一方が、嘘をついてでも自らを正当化していると言わざるを得ません。

⑷コミーFBI前長官と前川喜平・前文科事務次官

今回は奇しくも日米の双方で、官僚組織の元高官が政権に反旗を翻し、公的な場で証言を行っています。その元高官——コミー・前川両氏には、その立場だけでなく、証言内容が具体的で詳細であるという類似点があります。まずコミー前FBI長官から見ていきましょう。

前述したように、トランプ大統領がフリン元大統領補佐官の捜査に対する「要望」を出した際の状況を、コミー前長官はきわめて詳細に描写しています。

米上院の公聴会で宣誓するコミー氏(Photo by gettyimages)

前長官によれば当時、ホワイトハウスの大統領執務室(オーバル・オフィス)にある「木箱入りの床置き大型振り子時計」の傍のドアから、ラインス・プリーバス大統領首席補佐官(当時)が執務室内部の様子を伺っていました。そのときトランプ大統領は、プリーバス首席補佐官に対して「すぐに終わるから」と言いながら手を振り、同首席補佐官にドアを閉めさせたというのです。

言うまでもなく、こうした具体的証言は、コミー前長官による証言の説得力を補強するものです。

次に前川氏の証言です。同氏は「9月9日午後」「9月29日14時頃」「10月17日午後4時前」と日時を入れながら証言を行っています。一方、和泉氏は前述のように、「日時は分からないですけれど」「記録に残っていないので」「私の記憶に従って答えるしかないのですが」と前置きした上で証言をしています。

和泉氏の証言には日時をはじめ具体的な情報が欠如しており、前川氏の証言と比較すると、その質に差があると言わざるを得ません。