「警視庁 生きものがかり」は実在した!で、一体何をしているの…?

ちなみに本当の名前は〇〇係です
福原秀一郎

——ドラマの内容とは違いますが、やはり普通の人は知らない、特別なお仕事ですね。本当の「生きものがかり」がどんな仕事をしているのか、もっと教えていただけますか?

福原 簡単に言えば、「生きものがかり」は、絶滅の恐れがある動植物の密輸・密売事件などの捜査をする部署です。私は2014年に希少野生動植物密売捜査において全国で唯一、警察庁指定広域技能指導官に指定任命されました。全国でも珍しい「希少動物専門の警察官」というわけです。

もちろん正式には、「生きものがかり」という名前の係ではありません。「警視庁生活安全部生活環境課環境第三係」といいます。ご存じない方が多いとは思いますが、生きものを専門とする係は実在するのです。

保護した動物たちは動物園で

——密売犯たちとの攻防は本で読んでいただくとして、一番気になったのは、犯人を捕まえたあと、保護された動物たちをどのように飼育するのか、ということでした。

福原 ドラマではひとつの部屋にいろいろな動物が飼われていましたが、現実の警視庁には、そのような部屋はありません。けれども、動物たちは適切に飼育しなければ死んでしまいますから、当然、保護した動植物をフォローするのも私たち「生きものがかり」の仕事のひとつです。

横浜市立野毛山動物園の桐生大輔さんという職員の方(現在は横浜市立金沢動物園に勤務)に、世間話のつもりで「密輸で国内に入って来たカメを証拠品として押収することがあるんですが、その受け入れ先がなくて大変なんですよ。預かってくれる施設はないですかねぇ」と話したんですが、すると桐生さんは「それならウチの動物園で預かりますよ」と申し出てくれたんです。

それ以降、カメや爬虫類の押収があった際には、まず桐生さんに電話を入れるようになりました。桐生さんに預けると、彼は自分の動物園だけでなく、全国の動物園にも問い合わせて、引き取り先をアレンジしてくれるのです。もちろん、保護した個体を野毛山動物園からほかの動物園に譲ることは、法的に何の問題もありません。

国の天然記念物で、沖縄県固有のカメであるリュウキュウヤマガメを保護したことがあるのですが、そのカメも野毛山動物園に保護を依頼しました。するとその後、2014年11月、野毛山でリュウキュウヤマガメの子ガメが孵化したんです。沖縄以外では初めての繁殖成功でした。あれは嬉しかったですね! もちろん、子ガメに会いにいきましたよ。

——珍しいカメの他にも多くの希少動植物が登場しますね。ワオキツネザル、マレーガビアル(ワニ)、アカヒゲ(鳥類)、アジアアロワナ(淡水魚)、パフィオペディルム ディレナティー(ラン科植物の常緑多年草)、テナガコガネ(コガネムシの仲間)、ヘリグロヒキガエル……。それから、レッサーパンダも出てきます。

福原 「パンダ」という名がつくと可愛い動物と思いがちですよね。ちょうど上野動物園でジャイアントパンダの子どもが生まれて祝賀ムードでもあります。レッサーパンダは、私も動物園で見たときは可愛いと思ったんです。

 

ところが、あるとき盗難に遭ったレッサーパンダを見つけて、捕獲することがあったんです。そのときの「この子」(動物のことを福原さんはこう呼ぶ)の凶暴なことといったら! うなり声ももの凄く、爪を立てて激しく抵抗するので、まったく手に負えず、近くの動物園から飼育員と獣医に来ていただき、3人がかりでやっと捕獲しました。

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初めて押収する動物の場合、かならず、その動物の専門家に「扱う上での注意事項」をあらかじめ聞いてから押収します。押収した生きものは証拠品ですから、裁判の公判中に亡くなるようなことがあってはならないので、貴重品のように慎重に慎重を期して扱わなければならないのです。