フジテレビはいつまで「内輪ノリ」を続けるつもりか

ギョーカイの仲間意識はもうたくさん
松谷 創一郎 プロフィール

ヒントは他局やSVODにあり

こうした従来の内輪的テレビ空間が視聴者に訴求しないことを踏まえれば、打開策もおのずと見えてくる。具体的なヒントは、他局やSVOD(動画配信サービス)の番組にすでにある。

ひとつが、“ある種の”紀行番組だ。具体的には、テレビ東京の『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』(土曜日19時54分)やNHKの『ブラタモリ』(土曜日19時30分)などだ。これらの番組に共通するのは、意図せず起こる出来事や舞台となる地域そのものをコンテンツの中心に据えていることだ。

タモリや出川哲朗が出演していても、そこでは“ギョーカイ”性が強く押し出されることはない。

〔PHOTO〕gettyimages

プライムタイムへの昇格が決まったテレビ朝日『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』(火曜日23時15分)においては、ロケに行ったお笑い芸人よりも「ナスD」の愛称を付けられたディレクターのほうが人気となった。

あるいは、テレビ東京の『YOUは何しに日本へ?』(月曜日18時55分)や『家、ついて行ってイイですか?』(水曜日21時)のように、ロケに芸能人を起用しない番組もある。

フジテレビでもそれに近いフォーマットの番組として、『有吉くんの正直さんぽ』や『タカトシ&温水の路線バスの旅』(ともに土曜日12時)がある。しかしこの両番組が土曜日の昼過ぎに放映されているあたりに、フジテレビがこうした番組を軽視していることがうかがえる。

もうひとつのヒントは、SVODのバラエティ番組だ。具体的には、Amazonプライムビデオの『ドキュメンタル』や『カリギュラ』、『千原◯ニアの◯◯-1GP』などだ。これらはすべて吉本興業の制作で、同プロダクションに所属する松本人志や今田耕司、東野幸治、千原ジュニアが出演している。

それらで共通して謳われているのは、「地上波テレビでは不可能」ということだ。

『カリギュラ』にいたっては、「(地上波では)マニアック過ぎて視聴率が見込めない。コンプライアンス的にNG」な企画(真偽は不明だが)をやるとまで言い切る。それが、東野幸治が鹿を狩りにいく企画や「ホームレスインテリクイズ王決定戦」などだ。

見る人が見ればそれらの内容はとてもくだらなく、とても低俗に感じるだろう。また、そうした企画が成功ばかりしているとも限らない。とくに『ドキュメンタル』のファーストシーズンは大失敗だった。

しかし、それらは内輪受けよりも企画を重視したアプローチであり、出演者たちも生き生きとしている。こうした挑戦的なバラエティは、地上波では現在は『ゴッドタン』などテレビ東京の深夜枠以外ではほとんど見られない。

 

リアリティショー性とローコンテクスト性

内輪的テレビ空間からいかに距離を置くかが、現在の潮流であることは間違いない。それらに共通する要素は、リアリティショー性と、それにともなうローコンテクスト性だ。

リアリティショー性は、むかしから日本でも見られた。90年代に大ヒットした日本テレビの『進め!電波少年』の「ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」や各局の大家族番組は、その先駆けとも言えるヒット作だ。

リアリティショーは、従来の内輪的テレビ空間とは明確に一線を画すものだ。キャストの有名性に依存せず企画で勝負するゆえに、視聴者への間口は広い。ローコンテクスト性とはこの点を指す。前述したある種の紀行番組やSVODにおける吉本芸人の番組にも共通することだ。

芸能人の存在を仰ぎ見て“ギョーカイ”に憧れる視聴者は、もはや多くない。フジテレビも『テラスハウス』というリアリティショーを生み出し、Netflixで続けている。先鋭的な感覚を地上波に落とし込む準備は、十分に整っているはずだ。

「楽しくなければテレビじゃない」という“フジテレビイズム”を再定義するためには、過去の栄光である内輪的テレビ空間を捨てることこそが肝要なのである。