人生って何ですか?小島慶子さんから佐藤愛子さんへの5つの質問

奥義を教えてください
佐藤 愛子, 小島 慶子

人生は不可解だから面白い

佐藤 やむを得ずそうなっちゃった。夫に養ってもらうのは沽券にかかわる、とかそんな目覚めた感じじゃないんですよ。

小島 逆に、女なのにこんなに働かなくちゃいけないなんて、と思うこともなかった?

佐藤 男に養ってもらって当たり前という考えもなかったのよ。ボンクラと一緒になったからにはしょうがないじゃない。

小島 否定のしようがない(笑)。どうして、そんなボンクラが良かったんですか?

佐藤 『晩鐘』という小説にも書きましたけど、本当に不可解な男だったんですよ。すべてに寛容だったんです。わがままで言いたいことを言う暴れん坊の私に、みんなが顰蹙していても夫は許容してくれたというだけで、「これは偉大な男だ」と思っちゃったのよ。

小島 なるほど。

佐藤 それに、文学的に数等、私より勉強してましたからね。男と女の愛情というより師匠と弟子みたいだった。他の評論家が私の小説をボロクソに言っても「いや、いいんだよ、これで」って彼が言うと、それでもう他の評論家はバカなんだ、と思ってね。

小島 そのときの佐藤さんには、そういう人が必要だったんですね。

佐藤 そうね。だって私、文学少女でもなんでもない。文学的素養というものがまったくなかったの。

 

小島 それを知って私、びっくりしました。てっきり本の虫だったのかと。

佐藤 純文学と大衆小説の違いも知らなかった。父(『あゝ玉杯に花うけて』などで知られる佐藤紅緑)は作家でしたけど、たいしていい小説とも思わなかったし、一生懸命に読んでもこなかった。のらくらした、ひどい娘だったんです。

小島 のらくらしていても、いい出会いがあって、その人に導かれて才能が開花して。ただ、佐藤さんの場合はいろんな大変なものもオマケでくっついてきてしまったんですね。

小島慶子 1972年生まれ。放送局勤務を経て、現在はタレント、エッセイストとして活動中。著書に『解縛 母の苦しみ、女の痛み』『これからの家族の話をしよう わたしの場合』、小説『わたしの神様』『ホライズン』など。家族と暮らすオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する出稼ぎ生活を送っている。

佐藤 だから「禍福は糾える縄の如し」じゃないけど、いまマイナスと思っているものがプラスになったり、これはプラスと思っていたものがマイナスになったりするのが人生だという考え方が身についちゃった。たとえば亭主の会社が倒産して借金がいっぱいあってというのは大きな不幸だけど、このことを小説に書いて直木賞を受賞した。あんな目に遭ってなければ『戦いすんで日が暮れて』という小説は生まれてないわけですよ。

小島 本当にそうですね。私の夫は別に文学的素養があるわけではなく、一テレビディレクターだったわけですが、他で受け入れてくれない私を受け入れてくれるこの人ならばと思って私も一緒になったんですね。ところが結婚して十六年たったら彼が仕事を辞めて私が働かなきゃならなくなって。あれ? 良かったのか悪かったのか、どっち? って。

佐藤 それだから人生は面白いんですよ。

小島 出稼ぎしたからこそ、この本が出せたんですもんね。