2017年は「ヤクザの終わり」元年となるのか。猫組長の答え

かつての「任侠」を取り戻すことこそが…
猫組長 プロフィール

「ヤクザマネー」VS市民経済

ところが近代化の中で、治安維持機能はヤクザから国家へと還元される。1964年に、法務省が作成した「犯罪白書」に「暴力団」という言葉が登場し、暴力団壊滅作戦である「第一次頂上作戦」が行われたことは、その年に近代化の範である「東京オリンピックの開催」と無関係ではない。

やがて時代は高度経済成長期末期のバブル期へ。ヤクザも暴力から経済へと組織性格を変貌させていく。「西の宅見、東の石井」と呼ばれた五代目山口組・宅見勝若頭は、配下組織による繊維大手「クラボウ」の買占めに(90年)、また、稲川会二代目・石井隆匡会長は東急電鉄買占め(89年)で世間を驚かせた。

そして、活動を経済へとシフトしたヤクザ社会は、ついにそれまでタブーとされていた一般市民へと牙を向ける――すなわち、サラ金、闇金やマルチ商法など市民経済にダメージを与える分野に進出し、直接あるいは間接的に関与していったのである。

こうして混乱期の治安の担い手から市民の敵へと堕したヤクザ組織は、1992年暴力団対策法が施行により「暴力団」と法規定され、社会と隔絶されることになったのだ。

しかしドメスティックな法規制である「暴対法」と、共謀罪が目指すグローバルな「パレルモ条約」との間には、大きなかい離がある。渡邉哲也氏との共著『山口組分裂と国際金融』に詳しく書いた、黒い経済史を続けよう。

 

バブル末期にあって、暴力団も大きく膨らんだ「黒い資金」を蓄えることとなった。しかし、暴対法という規制によって巨額な「ヤクザマネー」は国内で行き場を失い、海外――つまり国際金融市場へと流れ込む。

「ヤクザマネー」の強みは「速度」である。例えば1億円の土地が、明日確実に3億円に上がる情報があったとして、普通の人が銀行に融資依頼をしても1億円を即金で借りることはできないだろう。

ヤクザのタニマチを「ダンベ」と呼ぶのだが、ヤクザやダンベ、周辺関係者はいざという時のために、資産を足のつかない現金で所有している。ということで、ヤクザはその情報を仕入れた瞬間に1億円を集めることができるのだ。

担保となるのは、焦げ付いた時に生命を脅かされる「恐怖」。同じ土俵の上で、「速い金」を持つヤクザと一般市民では、勝負になるはずもない。こうしてヤクザマネーはドルに姿を変え、国際金融相場で悪さをし始めたのだ。

犯罪収益はロンダリング(資金洗浄)によって、タックスヘイブンを経由しながら国際金融市場で暴れ回ったが、自分の縄張りで税金と言う寺銭も払わずに、ドルを使って犯罪収益を膨らませるヤクザに激怒したのがアメリカである。

何より海外のマフィアの構成員が身分を隠して生活しているのに対して、ヤクザは堂々と看板を掲げて活動をしている。このようなことも合わさって、任侠団体を主張するヤクザは、国際社会ではマフィアどころか一種の政治結社…すなわちテロ組織とされたのだ。そのトップブランドが「YAMAGUCHIGUMI」だ。

2011年には東京都と沖縄県で暴排条例が施行され、同条例が全国で完備。翌12年にはアメリカが六代目山口組・司忍組長と2人の幹部を経済制裁対象とし、日本政府にもヤクザ組織への金融制裁を申し入れることになる。

そして今年ついに「共謀罪」が成立した。ヤクザ側が警戒しているとおり、共謀罪の標的が、国際社会で「テロ組織」と扱われている暴力団であることは明らかである。