市場移転決定でも「豊洲エリア」がもう人気を取り戻せない明確な理由

 マンション市場の縮図がここにある
榊 淳司 プロフィール

豊洲への壮大なネガキャン

2016年後半から始まった新市場の移転問題にまつわる騒動で、テレビや新聞、ネットメディアで「豊洲」の2文字を目にしない日はなかった。

そのほとんどが「ベンゼン」「シアン」などの毒性物質の名称や、「基準値の○○倍」といった、マイナスイメージを植えつけるワードを伴っていた。

豊洲新市場外観ようやく築地からの移転が決定した豊洲新市場 photo by gettyimages

マス媒体をほぼすべて巻き込んだあの騒動を、(ネガティブ)広告キャンペーンの一種だと考えれば、具体的に計算したわけではないが、おそらく数千億円規模のものだったろう。要するに、「江東区豊洲」というアドレスに対して、それだけ強力なディスカウントキャンペーンが行われたわけだ。

豊洲のマンション住人にとっては、迷惑どころではない。一連の報道によって、自分が所有している(ローンを払っている)マンションの資産価値に対して、具体的な強いマイナスの影響が及んだのだから、それも当然だ。

 

「豊洲エリア」とは何か?

地図をよく見てほしい。

地下から毒性物質が検出された新市場予定地と、「江東区豊洲」という街の中心である東京メトロ有楽町線「豊洲」駅とは、直線距離で1km以上も離れている。

また、新市場のある豊洲6丁目の島と、豊洲1丁目から5丁目がある島とは、幅300m弱ほどの通路のような陸地でつながっているだけ。実質的に、別の島と言っていいくらいだ。距離だけで言えば、東雲運河を挟んだ南対岸の「有明エリア」のほうが、新市場に近い。

何が言いたいかというと、基準値をはるかに超える毒性物質が見つかった新市場と、多くの人がイメージしている「豊洲」とは、ほとんど別の街と言っていいほど離れていて、エリア的にもくっきりと区切られているということだ。

新市場のある島の埋め立て工事が完成したのは、実は戦後のこと。関東大震災のがれき処理のために埋め立てられ、戦前から存在した豊洲1丁目から5丁目と地続きになったため、同じ町名が付されたのだろう。

歴史的にも地理的にも特段深いつながりのない6丁目のとばっちりを受けた、豊洲1丁目から5丁目までの住人たちが、いかにも気の毒である。