10年後には、日本の「家電量販店」は消滅しているかもしれない

「ビッグ3」の業態変化が示す未来
加谷 珪一 プロフィール

ヨドバシはアマゾンを食らう

一方、主戦場を店舗ではなく、ネットにシフトさせ、アマゾンが狙う新しい市場に参入しようとしているのがヨドバシカメラである。

ヨドバシの売上高は約6600億円となっており、ここ数年、6000億円台での推移が続いている。経常利益は500億円台となっており、200億円台であることが多いビックカメラと比較すると、まずまずの高収益体質である。

ヨドバシの高収益は無理な出店を避けてきたことやネット通販を強化したことが主な要因だが、同社が今後の活路として見いだしたのはやはりネットであった。

同社は2016年9月、アマゾンの即日配送に対抗し、ネットで注文した商品を最短2時間半で届ける新サービス「ヨドバシエクストリーム」を開始した。

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サービスは基本的に無料で、ネットで注文すると、即座に出荷が行われ、配達要員がどこにいるのかといった情報もネットを通じて確認できる。荷物の受け取りにサインが要らないため、受け渡しもスピーディだ。

同社は、新サービスの立ち上げに際して、川崎市にある物流センターを大幅に拡充。アマゾンに匹敵する物流システムを作り上げた。

ヨドバシエクストリームでは、従来から取り扱っている家電やAV機器、パソコン類に加え、日用品のラインナップを強化している。ヨドバシの路線は、アマゾンが目指す方向性とかなりの部分で一致している。

 

3社の行く末は

これまで家電量販店は、どこも同じような戦略であり、純粋に企業体力やシェアが勝負を決めていた。だが市場の飽和によって、3社はまったく別々の方向に向けて歩み始めている。これは、大量生産・大量消費という従来の市場構造が大きく変化したことと無縁ではない。

近い将来、従来型の家電量販店でマス向けの商品を購入するというスタイルは消滅しているかもしれない。米国ではアマゾンが既存の小売店を駆逐しながら大躍進を遂げているが、一方でウォルマートもネットを強化し、品物を受け取る配送拠点として各店舗を活用するなど、アマゾンと互角に戦っている。

ネットが当たり前の存在として社会に普及した今、ネットビジネスとリアルビジネスという区分は意味がなくなりつつある。確実に言えることは、いずれのアプローチを実施するにせよ、中途半端な立ち位置の企業は存続が難しくなるということである。

その意味で、ここで取り上げた3社は、成功するかどうかはともかく、新時代に向けて行動を開始した経営姿勢はおおいに評価していいだろう。もっとも危ないのは、業態をまったく変えることができず、前進も後退もできない企業ということになる。