「冷房をつけると地球が暖かくなる」のは一体なぜか?

時間が前に進む理由を考えてみると…
松浦 壮 プロフィール

冷房はプチ・タイムマシン

では、贅沢は言わずに、一部の物体の時間を巻き戻すことなら出来るでしょうか?

これは可能です。そして、皆さんのすぐ側でうなりを上げている冷房はその一例です。

例えば、どこぞのオフィスのように、部屋の中が27℃、外気温が35℃だったとしましょう。これはエネルギーが偏った状態です。放っておくと、確率の原則に従って、あっという間にエネルギーは平均化され、部屋の中は35℃という灼熱地獄になります。これは時間経過の自然な営みです。

〔PHOTO〕iStock

冷房は、この空気の時間経過を巻き戻す装置。言わばプチ・タイムマシンです。

この先、冷房の仕組みがどれほど進歩し、今とは全く異なる仕組みで動くようになったとしても、その本質は部屋の中から熱エネルギーを吸い上げて、それを外部に放出することです。

元々平均化していたエネルギー分布に差を生み出すのですから、バラバラになった状態の一部を整然とさせるために、どうしても一定の労力が必要です。

結果、部屋から吸い取った熱エネルギーに、労力によって発生するエネルギーが上乗せされて、その合計が外に放出されることになります。大気にまき散らされる熱は、部屋から吸い上げる熱よりも確実に多くなります。

その結果、冷房をかければかけるほど、地球の大気はトータルとして熱エネルギーを増やし、僅かとは言え気温が上昇します。特に都市部ではこれが無視出来なくて、冷房の廃熱が夏場の気温上昇の要因にすらなっています。

冷房というのは、地球にとっては暖房なのです。僅かとは言え時間を巻き戻したツケ、と言えるのかも知れません。

 

とは言え、この暑い盛りに冷房を入れないというのは現実的ではありません。この装置もまた、人類が熱と時間の秘密に触れたからこそ生まれた英知の結晶です。

そこに辿り着いた先人の足跡に思いを馳せつつその恩恵にあずかり、冷たいビールを楽しみながら秋を待つのが吉というものです。

ただし、このビールが冷たいのもまた、僅かに時間を巻き戻した結果であることをどうかお忘れなく。