科学史の泰斗が問う「日本科学界のタブー」

科学は軍事とどう付き合うべきか
杉山 滋郎 プロフィール

研究費管理だけでは歯止めにならない

しかし、こうした取り組みは「民生目的の研究」という旗印の下で実質的に「軍事目的の研究」を進めるもの、とも言いうる。

したがって軍事研究に反対する人々は、デュアルユース性のある研究に対し防衛省が提供する研究費を、研究者は受け取るべきでない(安全保障技術研究推進制度に応募すべきでない)と主張することになる。

そうした主張をする人たちの中には、民生目的の研究費(文部科学省の科学研究費など)をもっと充実させるべきだ、という人たちがいる。大学の研究者のなかに安全保障技術推進制度に応募する者が出てきたのは、大学の研究費がどんどん減らされているからだ、というのである。

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しかし、民生目的の研究費を増やしたからといって、軍事利用が止められるわけではない。民生用研究費による研究成果は広く一般に公開され、誰もが自由に、したがって軍事目的にも利用できるからだ。それがデュアルユースということにほかならない。

したがって、もし「昆虫あるいは小鳥サイズの小型飛行体実現に資する基礎技術」が軍事目的に利用されるのが問題だというなら、その「利用」に対して歯止めをかけることを考えなければならない。「研究費の出所」を管理するだけでは歯止めにならないのである。

しかし、そもそも「昆虫あるいは小鳥サイズの小型飛行体実現に資する基礎技術」が軍事目的に(自衛隊によって偵察・監視に)利用されることは、よくないことなのだろうか。わが国の安全を守るため、あくまで自衛目的の範囲内で利用するのであれば、いいのではないか。

 

また、安全保障技術推進制度に大学の研究者が応募することを止めても、民間企業が応募するのではないか。

こうした疑問に、学術会議の声明はどう答えるのだろうか。それを知るために、もう一度、今回の声明「軍事的安全保障研究に関する声明」に立ち返ってみよう。