日本一過酷な通勤電車「東急田園都市線」の混雑率を20%減らす方法

たった一つの工夫で「快適」が生まれる
佐藤 信之 プロフィール

また、かねてより、渋谷駅での混雑を緩和するために、池尻大橋~渋谷間では田園都市線の定期券保持者に国道246号線の東急バスに追加の支払いなしで利用できる「バスも!キャンペーン」を実施している。

ところで、国が発表しているデータでは、田園都市線は、平成27年度池尻大橋・渋谷間で、7時50分から8時50分までの1時間で、混雑率は184%であったという。この1時間に10両編成29本を運行し、輸送力は42,746人であるのに対して、旅客数は78,687人であった。この数字は、ある日の1日、調査員を張り付けて調査した数字である。

 

時刻表では、池尻大橋発7時50分から8時50分の間の運転本数は26本である。念のために渋谷着で同時間帯の運行本数を勘定しても26本である。

ということは、調査日に29本運転していたということは、その前の時間帯の列車3本が遅れて運行していたということになる。不自然な数字であるが、いちおう、ノロノロ運転ながらも1時間最大29本まで運行できるということを証明するデータである。

また、最混雑前の時間帯は、池尻大橋発7時20分~50分までの30分間の設定本数は12本(うち急行3本)である。そのうちの3本が数十分遅れるということは、この時間帯にもっと運行本数を増やせば遅れも発生しないですむのではないか?

そもそも列車の遅れは次第に蓄積していくものであるから、最初の段階で適切に輸送力を確保すれば、最大ピーク時間帯の遅れは緩和されるのではないか?という素朴な疑問が浮かぶのである。

それに、最混雑1時間の設定本数は26本であるので、列車に遅れがないとすると混雑率はいくらか上昇してしまうという皮肉なことになる。

もちろん、ラッシュ前に渋谷に着くはずの旅客で列車が遅れた結果最混雑時に渋谷に到着することになってしまった人たちがいる訳で、これらの旅客は、列車に遅れがないとすると、最混雑時前に渋谷に着くことができるので、最混雑時の旅客数自体が若干少なくなり、混雑率の上昇はわずかにとどまる。

1本増発すれば7,000人旅客を減らせる

ここで提案したいのは、池尻大橋7時20分~50分に1本増発して13本・2分20秒間隔にする。これで遅れを防げれば最混雑1時間に遅れていた列車の旅客分として7,000人程度減らせる。この他に増発した1本分1,474人分の輸送力が増える。

そのうえで、最混雑1時間の運転本数を3本増発して29本・2分10秒間隔にする。実際(ダイヤ上ではなく)には29本運転できている。

そうすると、最混雑1時間の輸送力は42,746人のまま、輸送人員は78,687人が71,000人程になって、混雑率は現在の184%から166%に低下するはずである。また、今年度の下期には、大井町線の急行電車の編成両数が20m車6両から7両に増える予定である。それにより田園都市線から大井町線への旅客のシフトも予想できるので現在より20%混雑率を低下させることができるという計算になる。

要するに、現在29本で運んでいるところを32本に増やすのであるから、混雑率は約20%低下するのである。

来年3月に小田急電鉄が世田谷代田~東北沢間の複々線化が完成して、最混雑時9本増発により最混雑1時間の混雑率が160%程度まで落ちると公表している。

田園都市線では、大規模な設備投資なしに、ラッシュ前とラッシュ中のわずかな増発により大きく混雑率が低下する可能性があるのである。また、今年度は田園都市線に新型電車2020系10両編成3本を新造する計画がある。代替で捻出される車両を使って、試験的に増発してみるのにタイミングも良い。

佐藤信之(さとう・のぶゆき)1956年東京生まれ。亜細亜大学講師、一般社団法人交通環境整備ネットワーク相談役、NPO法人全国鉄道利用者会議(鉄道サポーターズネットワーク)顧問、公益事業学会、日本交通学会会員。亜細亜大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得。専攻・交通政策論、日本産業論。著書に『通勤電車のはなし』他多数。
混雑率200%に達する東西線や田園都市線をはじめとして、問題の大きな路線をピックアップし、問題点と対策を解説。さらに輸送改善の歴史をふりかえり、将来必要な新線はなにか、その費用はだれが負担すべきかを展望する。