あの夏、僕はチャーリー・ブラウンと同じ服を着てすごした

女性が手作りしてくれたシャツ
片岡 義男 プロフィール

ずっと探していたシャツを発見

だから次の日、夏の土曜日、さっそくそのポロ・シャツを着て、代田一丁目から茶沢通りを歩いて三軒茶屋に向かった。太子堂二丁目にいまでもある横断歩道を渡りたかった僕は、信号が変わるのを待って歩道の縁に立ちどまった。

道の向こう側で母親と手をつないで信号待ちをしていた五、六歳の女の子が、僕の着ているポロ・シャツに気づいた。彼女は腕を上げて僕のポロ・シャツをまっすぐに指さし、大声で笑った。

僕はいっこうに平気だった。笑われてむしろ得意になり、それから三日、連続してそのポロ・シャツを着ていろんなところを歩いた。大学へもいった。そして洗濯した。赤いジグザグは盛大に色落ちした。白いはずのポロ・シャツは、そのぜんたいが妙にまだらなピンク色となった。これはこれで気に入った僕は、その夏ずっと、このポロ・シャツを着ていた。

襟の先端が丸くなっていて、襟そのものがぺったりと平らになるポロ・シャツは、いくらでもある。しかし、先端のとがった、立った襟のポロ・シャツは、ありそうでなかなかない。それを僕はつい先日、L.L.Beanのサイトで見つけた。レイクウォッシュド・ポロといい、僕が探していたポロ・シャツにたいそう近い。ミネラル・グレーと称する淡い灰色を、Mのレギュラーで三着、注文した。

ジグザグを色違いで三種類作る。ひとつはすでにきまっている。よく熟れた富有柿の色、つまりチャーリー・ブラウンのあのポロ・シャツの地の色だ。あとのふたつはまだきまっていない。色落ちしないよう気をつけなくてはいけない。別布をジグザグのかたちに縫いつけるのも、やめたい。ジグザグのかたちをきめなくてはいけない。ポロ・シャツのどの位置にジグザグを置くかは、重要な問題だ。

もっとも大事なのは、たいそう気楽に手描きした線の集合によるジグザグというオリジナルを、大人用のポロ・シャツの胸に、どのようにして再現するかだ。夏の暑さが続いているうちにこのポロ・シャツを作りたい。僕はふたたびチャーリー・ブラウンになろうとしている。