# 育児

いま日本に必要なのは徴兵制じゃない…徴父制だ!

この国の子育てを救う最終手段
海猫沢 めろん プロフィール

政府への政策提案「徴父制度」

この国にひとつの具体的政策を提案したい。それは徴兵制のかわりに徴父制をつくることである。

徴父制とはこのようなものだ。

女性が子供を生むと、父親はその赤ん坊とともに育休のはじめの1ヵ月ほどイクメンキャンプに送り込まれる。

教官は尾木ママとつるの剛士とだいすけお兄さんを足して全部引いてアメリカの海兵隊をくっつけたみたいなやつで、すぐ棍棒で殴る。

「寝るな! クソが! おまえは育児するための機械だ! 育児する顔をしてみろフニャチン! 泣くのか! ここにはおっぱいはないぞ! 貴様らの存在は赤ん坊のクソ以下だ! おまえらがクソをしていいのは赤ん坊のクソをとりかえた後だけだ!」

とか言われて、基本的に毎日そいつに殴られながら不眠不休で子育てする。

〔PHOTO〕iStock

徴父制の数年後、この世代が上司になれば、育休の取られ方も、例えばこう変わる。

上司「君、子供が産まれたらしいな。育休はとるのか」

部下「いえ。育休とらずに働こうと思ってます」

上司「は? ふざけるなよ。育休をとってイクメンキャンプに参加しろ。キャンプに参加してこそ一人前の本物の男だ」

部下「でも……」(えーいきたくねえなあ)

上司「いいから行け。あそこで男になれ」(おまえだけ楽させんぞ! 地獄を見せてやる!)

部下「妻が専業主婦なので……」

上司「F***! 専業主婦などそんな都合の良いものはこの世界に存在しない! 明日からおまえを子供と二人でベネズエラへ赴任させてやることもできるぞ!」

部下「わ、わかりました……育休取ります」

上司「それでこそ男だ!」

こうしてイクメンキャンプで育児戦士が増えていくのである。

 

男社会独自のヒエラルキーと、謎のホモソーシャル感を逆手にとった政策である。

ともかくイクメンキャンプは過酷であればあるほど良い。なぜなら男はこういう経験をすると「俺たちも苦労したんだからおまえだけ楽させんぞ!」と思い、下の世代も必ず同じ地獄へ叩き落とそうとするからだ。

政府にはこの政策を本気で検討してほしいが……やはりこれはあくまで理想論である。

現実には政府は育児に関する大胆な政策はとらないだろうし、インフラ整備も遅々として進まない。育児をめぐる言説は炎上するし、普通の子育ても大変だし、シングルの子育てはもっと過酷だし、どんなひどいパートナーであっても経済的な問題で離婚できないという不幸もあるだろう。

ぼくがひとつだけ言いたいのは、誰かのために誰かの人生が犠牲になる世界はおかしいということ。

子育てによって、誰かが犠牲になる世界は狂っているのだ。