結局、ロシアは北朝鮮をどうしたいのか?

日本人が知らない「プーチンの頭の中」
北野 幸伯 プロフィール

プーチンはこのとき、米国についてこう語っている(太線筆者)。

我々は何度もだまされてきた。我々の見えないところで事が決められ、実行された。

例えばNATOの東方拡大やロシアの国境近くに軍事施設を設けることなどだ。彼らは同じことを繰り返してきた。

「それはあなた方に向けたものではありません」

信じられない。

(欧州)ミサイル防衛システムの展開もそうだ。我々にとっては脅威にもかかわらず、施設や装置は設置されている。〉

赤の広場で演説するプーチン大統領 〔PHOTO〕gettyimages

〈 我々は根拠を持って次のように推察する。

すなわちロシアを抑制しようとする悪名高い政策は、18世紀、19世紀、20世紀にわたって続いてきた。そして今も続いている

我々は常に追い込まれている。〉

プーチンの、「生々しい」叫びである。

彼によると、米国は冷戦終結後も、「ロシアを抑制しようとする政策」を継続しており、ロシアは、「常に追い込まれている」のだ。

そう、彼の中では、ロシアと米国は、いまだに「戦争中」。しかも、「米国が攻め、ロシアが防戦している」という関係なのだ。ロシアの支配層は、このように世界を見ている。

 

「緩衝国家」としての北朝鮮

さて、これまで西側を見てきたが、にわかに緊張を増す東側に目をむけてみよう。

先述の通り、プーチンは、「米国は侵略政策を続けている」と考えている。そういう視点に立ってみると、日本のMDも、韓国のTHAADも全部、「対ロシア」に見えてしまうのだ。

ちなみにプーチンは、北方領土を日本に返せない理由の一つとして、「返還すれば、そこに米軍がやって来るから」としている。

そんな視点で北朝鮮を見ると、この国がロシアにとって、「米国の侵略を防ぐための重要な『緩衝国家』」になっていることがわかる。

確かにロシアは、「北朝鮮の核保有」には反対している。しかし、その反対の切実度は、日本、米国、韓国とは、比較にならないほど「軽い」ものだ。

なぜか? 北朝鮮がロシアを核攻撃することなどありえないからだ。

それではなぜ、ロシアは北の「核保有」に反対するのか?

もちろん、「核保有国グループの『寡占状態』を維持したい」とい意識もあるだろう(核拡散防止条約(NPT)によると、米国、英国、フランス、ロシア、中国が核兵器を保有するのは「合法」だが、その他の国は保有を「禁止」されている)。

しかし、より大きな理由は、「米国の同盟国である日本や韓国に、『核保有の口実』を与えない」ためであろう。

ロシアにとって、北朝鮮の核保有は、脅威ではない。しかし、米国の同盟国である日本や韓国の核保有は、「深刻な脅威」なのだ。