「甲子園を目指さない」ことが、結局最強のチームをつくる近道だった

プロになる選手は、こうして生まれる
長谷川 滋利 プロフィール

バント練習はあまりさせない

誤解がないように付け足しますが、勝ちにこだわらないわけでもないし、プロを目指さないわけではありません。

甲子園は先ほど挙げた「ショーケース」としての役割を終えようとしています。今はインターネットをはじめ、通信と情報の世界ですから、地方予選や練習試合だけでも有望な球児のリストは十分に作成可能です。甲子園に出なくてもドラフトにはかかります。

全球団のスカウトが甲子園のバックネット裏に集って…という光景はもう既に昔話ですね。メジャーのスカウトも甲子園自体には注目していますが、それよりも今は所属している高校でどんな学習態度か、トレーニング量と肩の消耗度、というようなむしろ甲子園以外の生活に注目するようになっています。

大谷翔平選手(北海道日本ハムファイターズ/花巻東高校出身)が、3年の夏の甲子園を逃してメジャー関係者が揃って胸をなでおろしたという話もあながち大袈裟ではありません。

 

話を戻しますが、だからこそ普段から、ミドルティーンの成長に合わせた適度の負荷のトレーニングを積んで、週末は実戦をする。週明けは完全休養日。そんなルーティーンでチーム作りをするのが理想ですね。

同時に総合的な野球の能力を上げたいので、ピッチャーとキャッチャーも含め、複数ポジションを経験してもらいます。バント練習は個人の判断でやるぶんには止めませんが、チームとしては最低限にとどめます。

そうすると、できあがるチームは一発勝負の、世界でも最大級のトーナメントである甲子園で勝つことはできないかもしれません。

負けたら終わりの甲子園への道では、どうしても強い打球を飛ばす打撃より、なんとか転がすバッティングが優先されてしまいます。ボテボテの内野安打でも、相手のエラーでもとにかく塁に出て、それを送って内野ゴロでも犠牲フライでも、とにかく1点を取る。エースのピッチャーが投げ、鍛え上げられた守備でその1点を守り切って勝つ。そんな野球になってしまいがちです。

決してその野球を否定するワケではありませんが、そうなるとプロになって活躍できる選手としてアジャストできるのか。コンスタントに力を発揮する選手になれるのかという不安が残ります。

僕が目指す野球部では、甲子園には出られないかもしれない。その代わりに、プロに入って活躍できるような、20代の前半から中盤にかけて才能が開花するような選手の下地は作れると僕は確信しています。

バッティングひとつとってもまずはボールを遠くに飛ばすこと。野球の原点に立ち返って、そのために効果的なトレーニングをするには何が必要か、選手と共に考える。そんな野球部が現在の理想のひとつなのではないでしょうか。