劉暁波の死を「完全削除」した、中国政府の非情なネット統制

国民の怒りはもう抑えられない
古畑 康雄 プロフィール

若者たちは、そもそも彼を知らない

だが、こうした思いを伝える知識人やジャーナリストは、中国のネットの大海では少数派だった。日本のテレビニュースでも劉暁波について「知らない」と答える街の人々の様子が報じられたが、特に天安門事件を直接知らない「80後」(80年代生まれ)、「90後」と言われる若者の多くは、当局の情報管理の下、劉暁波に関する知識が少ないのが実情だ。

筆者が日ごろから親しくしている中国の友人に、周囲はどのような受け止め方をしているかをフェイスブックのメッセンジャーを通じてたずねた。

 

「劉暁波や劉霞をこれほど残酷に扱っていることに、非人道的だと反対する人はいるはずだ。だが彼らは声を上げられないのか」と尋ねると、「そうだ、当然反対だ。だが声を上げることができないのだ」と答え、次のように続けた。

「中国人は決して冷血動物ではない。もし人々が彼の思想と境遇を知れば、大多数の人は彼を支持するだろう。だが現在の若者や農民工(出稼ぎ労働者)は彼が誰だか知らない。だが『89(天安門事件)世代』の自分たちは、彼の動向に常に関心を持ってきた。現在の最大の問題は、ネット封鎖、いわゆるGFW(グレート・ファイアーウォール)であり、人々を愚昧で閉鎖的にし、世界の人々とは隔絶された世界に閉じ込めている」

「今晩は高みの見物をするとしよう」

知人の自由派学者は、劉の死について、筆者に次のようにコメントしてくれた。

「劉暁波の死は、中国の自由派知識人にとって大きな精神的な衝撃だ。劉は中国の自由派知識人の間で高い威信があり、精神的な指導者だった。彼は長期間牢獄につながれ、中国のネルソン・マンデラと言うべき人物だった。劉暁波が病気になり、当局の取った行動は、中国の知識人の当局との対立感情を高め、当局の人間性や人道主義の全くないやり方に憤慨した。だが、劉暁波の死去により、中国の自由派知識人から彼のような精神的な指導者を再び生み出すことは困難だろう。中国の政治改革の道はますます困難になる。中国の暗黒は今後長期間続くだろう」

知識人のこうした苦悩を見透かしたかのように、ナショナリズム的論調で知られる中国メディア、環球時報は14日、微博に次のようなコメントを書き込んだ。

「今日は広場(ネット言論の空間)をお前たちに譲ってやろう。死者は既に去り、悲しむパフォーマンスが盛んに行われている。我々は今晩は高みの見物をするとしよう」

そして同紙は「劉暁波は西側により誤った道に誘い込まれた犠牲品」という評論を発表、「劉暁波は中国が100年来最も急速な発展を遂げた時代に生活したのに、西側勢力の支持の下、国家の主流と対抗したことが、彼の悲劇を決定づけた」「劉暁波は時代の潮流を見誤り、一生を通じて西側が中国をこじ開けるためのてことなり、徹底的な犠牲となった」と論じた。