# 汚職 # 警察

汚職を追った「はみ出し者」二課刑事たち ぶつかった警察組織の変貌

ドラマ化決定『石つぶて』を語り尽くす
清武 英利 プロフィール

「会話の復元」が肝になる

――その機密費流用事件の端緒となった情報提供ですが、『石つぶて』の中では、ある政治家が二課刑事に電話をかけて、こんな話を持ちかけますね。「あのな、けしからん話があるんだ。外務省にとんでもない役人がいるらしい。近々来れるかね」。これに対して刑事は、「センセイの事務所ですか。いつでもいいですよ」と返します。まるでドラマのような一場面ですが、これは創作ではないんですよね。

清武 ええ、「ノン・フィクション」ですから、もちろん創作ではありません。実はこうした「会話の復元」が、ノンフィクションを書くときには非常に高いハードルになるんです。

実話を基にした小説、つまりノンフィクション・ノベルの立場を取れば、「彼らはこういう会話をしただろう」という著者のセンスで会話を書くことができます。しかし、私はそういう立場は取っていません。

長い時間をかけて、繰り返し、取材対象者の話を聞き、そのとき何と言ったのかを思い出してもらう。もちろん、極端な言い方をすれば、事件が発生したときの会話を録音して残してでもおかない限り、完全に厳密な再現などできません。

 

けれども、関係者の話を丹念に追っていけば、少なくとも、そのときその場にいた人々が、互いにどんな内容を会話の中で伝え合ったのかは理解できる。誰がどんな情報を、誰に教えたのか。そこで彼らは何を感じたのか。

ごく些細な表現の差異を除けば、そうした会話の「肝」の部分は、事実の近似値を再現することができる。ノンフィクションの書き手である以上、できうる限り、事実に近づいて再現する努力をする。そういうことが大事ではないかと思っているんです。