# 警察 # 汚職

汚職を追った「はみ出し者」二課刑事たち ぶつかった警察組織の変貌

ドラマ化決定『石つぶて』を語り尽くす
清武 英利 プロフィール

警察の何が変わったのか

――初めから執筆の構想があったわけではないんですね。

清武 初めから「こういうものを書きたい」と決めて対象に向き合うというのは、私の流儀ではないんです。「なんかおかしいな」「それってどういうこと」という疑問を追っていくうちに、次第に情報が蓄積していき、全体像が見えてくる。

汚職事件の捜査に関して言えば、3年をかけた取材期間のうちに話を聞いた捜査関係者のなかで、「汚職がない世の中になった」と信じている人は見当たりませんでした

一方で、近年は「この事件は筋が悪い。着手は難しい」と及び腰になる警察幹部や検察官が増えているのだということが、次第に分かってきました。

 

では、幹部たちは何を問題視するのか。汚職事件の摘発には、業界内での噂や、出所を公にできない情報が欠かせません。そうしたものがきっかけとなって捜査が始まり、厳しい取り調べによって裏付けを得て、立件する。それが、かつての汚職捜査のやり方でした。

そうした情報収集のために、二課の刑事たちは何をしていたか。不動産業者や国会議員の元に足しげく通ったのはもちろん、談合屋や、自分が贈賄で捕まえた業者と親しく付き合い、ネタ元にするような刑事もいたのです。「清濁併せ呑むようでないと、サンズイはできない」という証言もありました。

しかし、捜査の可視化が求められ、情報提供者との関係もクリーンであることが求められるようになってきた中で、社会規範すれすれのところで疑惑をキャッチすることは、許されなくなってきた。情報の一元管理が求められ、捜査員がどこで誰に会って、何を聞いてきたか、つまびらかにせよという警察組織の管理化が進んでしまったのです。

メダカは、少し濁った水の中でこそ、活発に泳ぎ回れますよね。それと同じように、官僚組織や世間から見て「はみ出し者」であるような二課の刑事がいても、それをあえて見逃して、うまく仕事をさせるような上司がいなくなってしまった。

では、かつての二課刑事たちの気風を守り、「瀆職刑事」として公務員の汚職に向き合った最後の時期の刑事たちは、どんな事件に取り組み、そこで何を感じていたのか。そう考えたとき、2001年の外務省機密費流用事件に行き当たったのです。