この夏、「第七の大陸」実在の証拠が掘削される可能性

海底地質学者が真面目に語る
佐野 貴司 プロフィール

大陸沈没を超える天変地異

それにしても、なぜ、人は「消えた大陸」に興味を持つのだろうか。

おそらくそれは、大陸が沈没して巨大津波が襲うという、巨大災害への関心からだろう。

じつは、長い地球の歴史において大陸沈没を超える天変地異が幾度となく起きている。その原因は「巨大隕石の落下」と「超巨大火山の噴火」だ。どちらも生物の大量絶滅を引き起こしたらしい。

生物の大量絶滅の中で最も有名なのが、約6600万年前の白亜紀の終わりだろう。それまで地表の支配者として君臨した恐竜や、海に繁栄したアンモナイトが突如として消えてしまったからである。

この大量絶滅の原因として最も有力視されているのが、巨大隕石の落下だ。メキシコのユカタン半島付近に直径10kmもの隕石が衝突した結果、大量の塵が発生して地球を覆い、太陽光を遮断して寒冷化を引き起こしたと考えられている。

この説は、隕石に多く含まれる(そして、地球表層の岩石には、ほとんど含まれない)イリジウムという元素が、世界中の白亜紀末の地層から検出されたという事実にもとづき提案された。

ところが、約6600万年前には超巨大火山の噴火も起きている。インド半島を広く覆っている大量の溶岩は、このときに噴出したものだ。

この噴火により大気中へ放出された火山ガスには、水銀などの生物にとって有害な物質も含まれていたらしい。そのため、絶滅には超巨大火山の噴火も影響している、と主張する研究者もいる。

 

このように隕石衝突説と火山噴火説の主張は食い違うが、どちらの天変地異にも全地球規模で生物の大量絶滅を引き起こすだけの力がある。まだ詳細な研究は進んでいないが、白亜紀末以外にも大量絶滅が記録されている地層は数多く存在する。今後、これらの地層が丹念に調べられ、地球に起きた天変地異の様子が明らかになっていくはずだ。

激動の地球史を明らかにする地質学

多くの人にとって地質学はなじみがなく、地味なイメージだろう。しかし、大陸沈没や大量絶滅といった激動の地球史を明らかにする科学こそ、地質学だ。

このたび上梓した『海に沈んだ大陸の謎 最新科学が解き明かす激動の地球史』(講談社ブルーバックス)では、そんな地質学の魅力をお伝えするべく、「海に沈んだ大陸」について科学的に検証しながら、大陸に関する地質学的な知識をわかりやすく解説してみた。

さらに、大陸沈没を超える天変地異を起こした超巨大火山の噴火や巨大隕石の衝突について、生物の大量絶滅をめぐるさまざまな議論を紹介している。

地質学は古くからある学問だが、海底の掘削技術の向上によって、いままで手に入らなかった岩石試料を得られるようになり、近年大きな進歩を見せている。岩石の中の小さな鉱物に、ごく微量含まれる元素を分析できるようになったことも大きい。「失われた大陸」についての画期的な成果が、この夏の掘削で出るかもしれないことは上でも述べたが、今後、世界中の地質学者がおもしろい成果を報告してくれるはずだ。

地質学はいま、もっとも目が離せない学問のひとつだと言っていいだろう。